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不登校Q&A

【質問10】 「高校どうしようかな」と口にするものの、まったく動き出す気配のない中学3年生の女の子

中学3年の女の子です。中学1年の2学期から不登校です。
 今は、ウィークデーの昼は寝ており、夜になると起きだして、テレビやビデオ、マンガなどを見て過ごしています。休日になると、図書館や書店、CD屋さんにひとりで出かけ、好きなものを買ったり、借りてきたりします。

 勉強や学校のことにふれると強く反発するので、はれものに触る思いで接しているのが現状です。最近は「高校どうしようかな」と口にするようになりましたが、教科書などは一切開こうとせず、動き出す気配はありません。秋になって親としては焦っていますが、やる気を出させるには、どのような働きかけが必要でしょうか。

【司会】池亀 良一

テレビやマンガばかり見ているということについては、「うちの子も同じだわ」と思っている親御さんがたくさんおられると思います。B男くんやA子さんは、不登校中、家でどんなことをやっていたんですか?

【回答】B男くん

僕も、このお子さんと同様、テレビ、ビデオ、マンガ…それから僕の場合は、これにゲームもプラスさせていただきたいんですが(笑)、まあ、これらは常套手段ですね。

なにしろ時間があまってしようがないし、勉強はするつもりもないしとなると、こういうことをするしかないんです。こういうことをやって一種の現実逃避というか、ゲームに集中している間は、不登校している自分を忘れられる。だから、それをやめなさいと言われると、僕としては逃げ道を奪われてしまうような感覚におちいりました。

母は「自分で責任がとれる範囲だったら何をやってもいい」と言って、ゲームをやっていても何も言いませんでした。でも、祖母と父からは「ゲームばっかりやって」と、しょっちゅう言われていました。まあ、今でも同じようなものかもしれませんが(笑)。

それと、マンガについては、今の僕の進んでいる方向を決定づけた部分もあって…。小学校3年のときに肺炎で1カ月ほど入院したことがあるんですが、病院で退屈しているだろうと、母が日本の歴史を描いたマンガを買ってきてくれたんです。それを読んでいたら、いつのまにか日本の歴史が好きになってしまって。

今、僕は大学で日本史学を専攻しているんですが、それは、このときに読んだマンガの印象が、ずっと中学生、高校生と続いていて、それで、大学を受けるときに目指したのが日本史という…人生、何がきっかけになるかわからないな(笑)という感じです。

【回答】A子さん

私もこの子と同じで、やることといえば、寝ているか、本とかマンガを読む、テレビを見る、そんな感じでした。

それで、読む本がなくなると、本屋さんに買いにいったり、図書館に借りにいったりということで、外に出たりしていました。

あとは、ピアノを小さい頃からやっていたので、家にある楽譜を弾いたり、それにあきると、ピアノの雑誌を買ってきて、そこに載っている曲を弾いたり、歌詞とかも載っているので、部屋のなかで大声で歌ってストレスを発散したりという感じでした。

それから、中学3年で、進路の問題がさしせまってきた頃、塾に通ったことがあるんですが、そこには別の中学の子たちが仲間同士で通っていて、私ひとりだけ違う中学だったので、孤立というか、隣の席の人ともあまり話をすることができなくて、かといって先生たちも、私のなかでは嫌いな部類に入る人たちだったので、結局やめてしまったんです。

そのあとで、親から「あなたひとりでは、きっと勉強できないでしょう?」みたいに言われて、家庭教師の先生をつけてもらったんですが、その先生とは不思議と気が合って、英語と国語の勉強を教わるだけでなく、たまには、自分がいろいろ思っていることをしゃべったり、その先生の大学の話を聞いたりして、楽しかったです。

【回答】小澤 美代子

このお子さんの場合、中1の2学期から不登校で、今、中3ですから、あしかけ2年くらいということで、かなり長期化している状況だと思います。

しかし、ここへ来て、お子さんが「高校どうしようかな」と口にするようになったというのは、かなりいい動きだと思います。「教科書などは一切開こうとせず」とありますが、私たちは、不登校のお子さんが進路の問題に直面したとき、「とりあえず勉強しなくても大丈夫だよ」と言うんです。すると、子どもがそこから動き出すということが多いです。

ご質問の最後に「やる気を出させるには、どのような働きかけが必要でしょうか」とありますが、やる気になるには「安心する」こと、「希望がもてる」ことが、とても大事です。ですから、「大丈夫だよ」「受験できるよ」「行ける高校はあるよ」と伝えて、安心させてあげる。そして、「本当に行けるかもしれない」という希望をもたせてあげることです。

「こんなことしてたら生きていけないわよ」というように、“脅せばやる”といった方法をとる方もありますが、不登校状態にあるときは、エネルギーがなく、かなりつらい状態にありますから、脅して追い立てても、動くことはできないんですね。

中3で進路の問題がさしせまった時期の対応については、一般的にいって、かなり共通するポイントがありますので、次に、それをお話ししたいと思います。

1.希望をもたせる

・不登校でも高校受験はできる

くり返しになりますが、まず、希望をもたせることが大切です。とくに、小学校からの長期的な不登校の場合などは、本人も親御さんも、はなから「高校へは行けない」「受験はできない」と思い込んでいることがけっこうあります。

先ほど【質問5】でもお話ししましたが、私たちは中3の1学期くらいまでは「できれば学校に戻れるといいな」と思って努力しますが、夏休み前後からは進路にターゲットをしぼっていきます。そのとき私は、まず「高校のこととか気になる?」と聞いてみるんですね。そうすると、それに対する反応で、その子の状況がだいたいわかります。

そこで顔色が変わって、貝のように口を閉じてしまうとなると、これ以上は進路のことにはふれられない。「もう1カ月先かな」という感じになります。一方、「だって受験できないもん」とか「高校なんて行けないでしょ?」といった反応があれば、言い方は悪いですが、餌にパクッと食いついてくれた感じで、じゃあ、次に話を進めようとなります。

今は、おそらく全国といっていいと思いますが、公立高校の場合、不登校だからといって受験できないということは、もちろんありません。また、不登校であるために、入試でものすごく不利になるということもありません。ですから、「不登校してたって受験できるよ」「高校だって行けるよ」と、しっかり伝えます。

・勉強は何とかなる

このように、進路に関するかかわりは、子どもたちの固く閉じた心の窓を少し開けてもらうことから始まります。少し開けてくれると、「だって勉強なんかできないもん」「ずっと何年も勉強やってないもん」といった言葉が出てくることが多いんですが、そのときも「大丈夫」「何とかなるよ」とか「まあ、勉強しなくても受験できるからね」とか言って、とにかく安心させます。そうでなければ、子どもたちは絶対、窓を開いてくれません。

そして、子どもが「あ、そうか。もしかしたら勉強しなくてもいいのかもしれないな」と思えると、ちょっと窓を開いてくれる。そこで、次の段階として「勉強しなくても受かる学校はあるけど、やりたいんだったら教えてあげるよ」というふうに話を向けます。なかには、そこから2~3週間の間にトントン拍子に進み、出席日数をかせぐ意味もあって、2学期から毎日センターに通ってくるようになった子もいます。

その子は、私が「忙しいから週1回しか教えてあげられないよ」と言うと、「センターに来て、自分でやるからいいです」と言って、朝、「来ました」と挨拶に来て、用意した部屋で2~3時間、過去問なんかをひとりで解いて、「じゃ、今日は帰ります」と言って帰って行く。これで、1日出席したことになります。

私以外にも、センターで手のあいている先生にみてもらったりして、この子は千葉の中堅の県立高校に入学しました。ほかに、千葉県でトップの高校に入った子もいます。

このように、まず希望をもたせて、閉じた窓を開けてもらうのが第1のステップです。

2.具体的な情報を与える

・受験できる学校についての情報(全日制、定時制、単位制、通信制、サポート校など)

・学校見学会や模擬試験の情報

まず、受験できる学校が「こんなにあるよ」と教えてあげる。ときには中学の先生が、熱心なあまり、いきなり「通信制がいいよ」などと勧める場合がありますが、私はまずは全日制を勧めます。全日制がダメなら定時制とかいろいろ考えますが、はなから全日制は無理と決めつけるのではなく、できるだけ希望をふくらませてあげたいと思っています。

 また、学校見学会や模擬試験など、進路に関するさまざまな情報を学校からもらうようにします。

3.できるだけいい学校を勧める

・本当ならこれくらいのところに行ける

不登校をしていたために今は学力が低いとしても、その子が本来もっていた力があるわけです。たとえば、勉強ができて、ほかのこともよくできていた子が、プツッと糸が切れたように不登校になってしまった場合でも、中学校の進路指導としては、最低レベルのところを勧めることが多いんですね。「ここしか行けない」「ここなら行ける」という言い方をよくします。

ただ、そういう子は、実際にそこに行ったら、本来の自分の力とあまりに違うので、がっかりすると思います。ですから、最低限のところではなく、その子の可能性として、いちばんいい学校を勧めてみます。「今は運悪くこんな状態だけど、あなたは本当は○○高校だって行けたと思うよ」といった言い方をして、とにかく希望をもたせてあげます。

・自分のポジションをわからせる(自信をもたせる)

そして、「だから、ちょっと頑張ってみようよ」というようなことを言うと、「だって頭悪いもん」「全然、勉強してないし」などと返してくるので、「いや、あなたは賢い。話をしていればわかる」「絶対、大丈夫だから、やってごらん」というように、ここでちょっとノセるんです。そして、本人に「あ、そうか。休む前は、けっこう勉強頑張ってたんだ」ということを思い出させて、自信をもたせてあげます。

4.具体的な勉強の指導をする

・嫌がらなければ、勉強を教える

・受験に必要なことは3カ月くらいでマスターできる

それで、本人が「勉強やってもいいかな」と思ったら勉強を教えます。ただ、その時点で半年くらいしか時間がないので、とにかくポイントだけ抑えて教えてあげる。私は英語の教師だったので、「英語は3年分を3カ月でやっちゃおう」みたいな感じで、ある程度のレベルまで引っぱっていってあげる。本人さえやる気になれば、それは可能です。

その段階で、本人がいいと言えば、家庭教師をつけたり、個人塾に通ったり、あるいは学校で先生にみてもらったりしてもよいでしょう。

5.受験向けの生活に無理にしない

・昼夜逆転は直らない

・受験したければ、寝ないでも行ける

ただ、昼夜逆転は、なかなか直らないんですね。でも、ここで変に無理をしないこと。「昼夜逆転を直さないと、高校に行けないんじゃないか」「受験できないんじゃないか」と心配して、そちらのほうにあまりエネルギーを向けると消耗してしまいます。子どもは、やりたいことがあれば起きますし、寝ないでも行きます。昼夜逆転が直れば行けるのではなく、行きたいところが見つかったから昼夜逆転が直るということが多いと思います。

また、中学校から、よく「1日でも学校に来たほうが高校に行ける」といった働きかけがあるんですが、それを本人が望むのならいいけれど、そこで行って、またトラブルに巻き込まれて、嫌な思いをして、振り出しに戻るのだったら、行かないほうがいい。ところが、親御さんも、担任の善意の勧めにはなかなか抵抗しがたいところがあって、「何とか3日間だけ行ったら?」となって、そこでやっぱり嫌な思いをするんですね。

そんなときは「今は行けるような状態にないので、受験のほうにエネルギーを向けさせていただきます」とか受験のことは言わないで「申し訳ありませんが、行かれません」というように、スパッと言ったほうがいいと思います。2学期からは本当に大事な半年ですから、こうした学校側の働きかけから子どもをしっかりブロックして、その子の将来、次のステップにエネルギーを向けてあげたほうがいいのではないかと思っています。

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