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登進研バックアップセミナー89・講演内容

リレー講演 ②不登校とネット・スマホ依存

*本講演では、事例を糸口に「不登校とネット・スマホ依存」の本質的な問題について考えます。

霜村麦

講師:霜村 麦(臨床心理士)

 

【事例1】

 中学1年生の男の子です。最初のころは「ネットは2時間まで」と決めていましたが時間が守れず、それが原因でケンカに発展することが多かったため、いまは時間を決めず自主性に任せていますが、朝起きてから夜寝るまでずっとパソコンの前にはりついている状態です。やはりこれは「依存症」という病気なのでしょうか。心配しすぎてこちらが病気になりそうです。


【事例2】

 高校1年生の女の子です。深夜まで、LINE(ライン)にはまっています。本人は「学校に行けないぶん、これが人とつながっているしるしだ」と言っていますが、どこまで黙って見守るべきか困るときがあります。

 

ゲームは不安をまぎらわす場であると同時に、達成感・充実感を得られる場

 私は、ふだん中高生の不登校のご相談を受けることが多いのですが、そのなかでネットやオンラインゲームに依存して困っているというご相談も多くなっています。
 その際、私が確認するのは、そうした依存が「不登校になってから始まったのか」、それとも「不登校になる前から始まっていたのか」ということです。最近では、オンラインゲームだけでなく、「ボーカロイド」という音符と歌詞を入力するだけでアニメの主人公が歌ったりする動画にはまっている子どもたちもいて、不登校になる前からはまっているケースが多いのです。

 まず、不登校になってからのめり込みがひどい子の場合は、あまり心配する必要はないと思います。なぜなら、不登校になってしまったためにゲームなどにのめり込む内的な要因の大きなものとして、「不安」があると考えられますが、不登校の子どもたちは、一日中家にいて何をしたらいいかわからない、うまくいかないことがたくさんあるなかで、まずは不安をまぎらわす手段としてゲームやネットにのめり込んでしまう傾向が強いのです。
 それは誰もがもっている傾向性であり、私たち大人も、何か嫌なことがあったり、何かを忘れようとするときには、まったく関係のないことをしてストレスを解消することが多いのではないでしょうか。子どもたちを見ていると、嫌なことが通り過ぎてホッとしたときにはゲームをやろうという気持ちにならなかったりするので、不安の感情とゲーム依存とは表裏一体なのかなと思います。

 もうひとつの内的要因としては、不登校の子どもたちは「頑張れる場」とか「自分の力を発揮できるもの」がほとんど失われている状況にあるということ。子どもたちは、「失敗する」「うまくいかない」「叱られる」「怒られる」「まわりから変な目で見られる」など、自己評価をどんどん下げるサイクルにおちいっているので、そのなかでゲームなどはある程度、自分で目標を立ててクリアしていく達成感を味わえたり、充実感を得られる場として、心理的な安定につながっているのだろうなと感じています。

 とはいえ、ゲームにのめり込んでいるわが子を見ると、親として不安にかられるのは当然でしょう。しかし、子どもの不安と親の不安を同時に解消することはできません(子どもがゲームをしなくなれば親は安心するでしょうが、子どもはますます不安になります)。
 ここでは、とりあえず親の不安の解消は保留にしていただき、まずは子どもがどういう気持ちでゲームにのめり込んでいるのかを聴いてあげたり、子どもが置かれた状況や気持ちを思いやり、その気持ちに寄り添うようなかかわりが必要になってくるでしょう。
 そして、力を発揮する場を失っている状況のなかで、子どもがネットゲームやスマホ以外に、「自分ってすごいんだな」「けっこうやるじゃん」と思えるようなものや場を見つけていくことが必要になってくると思います。

不登校になる前からゲームやネットに依存していた子の場合

 一方、不登校になる前からゲームやネットにのめり込みがひどかった子どもの場合は、簡単には解決できない側面があります。
 たとえば、ある限られた領域のことがらに興味・関心が強かったり、こだわりが強い子の場合には、学校が嫌だというよりはパソコンでゲームをしたいがために学校を休んでしまうことがあります。さらに、「パソコンは一日○○時間まで」というように自分をコントロールする力が育っていませんから、そうした自己コントロール力を身につけることが問題の解決には必要になってくるでしょう。

 発達障害の傾向があり、昼夜逆転状態でゲームやネットにのめり込んでしまい、長期にわたって生活がガタガタに崩れているような場合は、本人に昼夜逆転をなおしたいという気持ちがあれば、入院して治療するケースもあります。
 発達障害が影響している場合は、親御さんのかかわりだけではどうしようもないところもあり、専門家やカウンセラー、医療機関と連携しながら、どんな対応が望ましいのかをチェックしていくことも必要になってくると思います。

自己コントロール力を育むために

 さて、2つ目の事例について、「ラインにはまっていて、どこまで黙って見守るべきか困るときがある」ということですが、人間関係を保たせるツールとしてのラインのようなものは、元気になるきっかけとなる場合もあるので、できるだけ見守る方向で対応したほうがいいかもしれません。ただ、出会い系のような反社会的なサイトを利用している場合は、親御さんが強制的に介入していく必要があるでしょう。
 ラインで同級生とつながっていて、そこでのやりとりがあり、めげたり落ち込んだりすることはあっても、しばらくするとまた元気になったり、そういう経験をくりかえしながら対人関係の練習をしていくわけで、ラインについてはそのままで大丈夫かなと思います。

 ゲームやネットは不安をまぎらわす場であり、自分の力を発揮する場にもなっていることは先ほどふれたとおりですが、この「頑張る」とか、逆に「やりたいことを我慢する」といったことこそ、自己コントロールを学ぶことにつながります。
 「やりたいことを我慢する」というコントロール力を育てるために、もっとも有効なのは他人の評価です。つまり、ただ「ゲームを我慢しなさい」と言うのではなく、本当はゲームをやりたいのに我慢して本を読んでいるようなときに、それをほめたり認めてあげる。ほめるのは親御さんでも、担任の先生やカウンセラーでもかまいませんが、「よく我慢できたね」「えらいね」と認めてもらえる経験が多ければ多いほど、我慢する力は育まれていくでしょう。

 親としては、ネットやゲームではなく、再登校に向けて頑張る力を育てたいと思うことでしょう。そのためには、子ども自身が「こんなことができるようになったよ」「これは頑張れたよ」と自分で自分を評価できる機会が必要になってきます。そんなときに力を貸してあげられるのは親御さんです。「昔に比べるとこんなことができるようになってきたね」「以前よりすごく上手になったね」といったことを折りあるごとに口に出して伝え、子どもに意識化させてあげることが大切です。

「例外」を見つけて、ほめる、認める、喜ぶ

 オンラインゲームをずっとやり続けている子どもに対して、多くの親御さんは、「いいかげんにしなさい!」「またやってるの!」「いつまでやってるの!」という対応になりがちです。そうすることで親自身の不安を解消しようとしているとも考えられます。
 そんなとき、ちょっと視点を変えて、「例外探し」をしてみてはいかがでしょうか。

 たとえば、たまたまゲームをやっていない瞬間があったり、やりたい気持ちを我慢してほかのことをしていたら、「あれっ? ゲームやらなくても大丈夫じゃない!」とほめる。そうやって子ども自身の成功体験として結びつけてしまうんです。それをくりかえしているうちに、子どもは「こうやるとお母さんが喜んでくれる」「お父さんはこうすると認めてくれる」と思いはじめます。

 ここで大事なのは、親が「喜ぶ」ことです。「ほめる」「認める」に加えて、うれしそうにしていることがポイントです。そうした機会を積み重ねることによって、「例外」が例外でなくなり、日常的なものになっていくはずです。

 もうひとつ、子どもの不安材料を払拭するためには、明るい材料が必要です。
 このセミナーでは、これまで何度も不登校を経験した若者たちの体験談を聴く機会を設けてきましたが、たとえば、お子さんにその体験談の話をして、「昼夜逆転で一日20時間もゲームにはまっていたけど、現在は自立した生活を送っている青年がいたよ」とか、「不登校でも行ける学校がいろいろあるんだよ」とか、お子さんが希望をもてるような明るい材料(情報)を伝えていくことが必要です。

 往々にして親は、この真逆のことをしがちです。「学校も行かないで将来どうするつもりなの?!」「世の中そんなに甘くない」などなど。しかし脅されて元気が出る子はいません。ますます絶望して無気力化してしまうことも少なくありません。だからこそ、明るい出口がちゃんとあるんだよということを、親が意識的に伝えていく必要があると思います。

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