主として出席を前提としていない学校等
①通信制高校
通信制高校では、自宅で教科書や補助教材を使って学習し、教科書の決められた範囲についてレポートを作成(添削指導)し、毎週学校に提出することが学習の中心となりますが、定期的(月2回程度)に高校で行われるスクーリング(科目ごとの授業)にも出席する必要があります。
通信制高校には、公立・私立、広域校・狭域校、学年制・単位制とさまざまなタイプがあり、それぞれ独自の特色をもっていますので、自分に合ったシステムの学校を探すとよいでしょう。また、特別活動に参加することによって単位を修得できるなど、通信制ならではのメリットもあります。
入学に関しては面接のみで、ペーパーテストがないため、希望すればほとんど入学できることから、不登校生徒や転入・編入の生徒も多く在籍しています。
自由な時間が多く、自分のスタイルを曲げずにマイペースで学習できるため、不登校を経験して、同年代の人と一緒に学ぶことに抵抗を感じている人、友だちづきあいが苦手な人、毎日登校することに自信のない人などには適しています。
しかし、その一方で、自学自習の生活が基本になるため、定期的なレポート提出に向けた計画性・継続性のある学習スタイルや自己管理能力が大切になってきます。他人の目がないだけに、規律ある生活に慣れていない人の場合は、入学後すぐにやめてしまうことも少なくありません。
②技能連携校
ここでいう技能連携校とは、先に「高等専修学校における技能連携制度」の項(●ページ参照)で述べた指定技能教育施設としての職業訓練校や専修学校のことではなく、通信制高校と連携して、技能連携校と通信制高校を同時に卒業できる学校(専修学校ではない)のことです。
技能連携校に入学した生徒は、同時に通信制高校にも入学することになりますが、技能連携校で学ぶ職業的な技能連携科目は、そのまま通信制高校の単位として認定されますから、あらためて通信制高校で学ぶ必要はありません。また、その他の専門科目・教養科目の学習や通信制高校のレポート提出を中心とした普通科目の学習についても技能連携校がサポートしています。通信制のスクーリングについても、実際には技能連携校で行われることが多いようです。技能連携校は、専門知識を学びながら高卒資格もほしい人に適した学校といえます。
③サポート校
通信制高校は、自分のペースで学べる自由さがある反面、計画的・継続的に学習を進める自己管理が必要ですが、ひとりでコツコツと勉強するのは意外にむずかしいものです。そこで十数年前に、新しい教育システムとして登場したのがサポート校です。
サポート校とは、一般に「通信制高校に通学する生徒のために、学習面では高校のカリキュラムに合わせて単位取得のためのレポート作成の指導をし、生活面の指導も行い、通信制高校卒業のためのサポートをする学びの場」といわれています。
②の技能連携校と同様、サポート校に入学した生徒は、同時にそのサポート校と協力関係にある通信制高校にも入学します。ただし、授業や行事、友だちとの交流など高校生活の主体となる場はサポート校ですから、生徒たちは「本籍は通信制高校、現住所はサポート校」にあると考えればわかりやすいかもしれません。
現在、サポート校は全国で約180校、在籍者は1万人にものぼり、不登校生や高校中退者をはじめ、従来の学校システムになじめず新しい生き方を模索したい生徒などが多数学んでいます。学校により、教育方針・環境、規模、カリキュラムなどもさまざまですから、学校見学に行くなどして実際に自分の目で確かめることが大切です。
参考までにサポート校の特色について、いくつかあげてみましょう。
- 午前9時半始業など、登校時間をゆるやかに設定し、不登校を経験した生徒が通いやすい環境を整えている。また、少人数制・習熟度別クラス編成により、基礎学力をつけたい、苦手科目を克服したいなど、個々のニーズに対応した学習システムになっている。
- 予備校や進学塾を母体としたサポート校も多く、そのノウハウを生かした、きめこまかな進学指導や進学情報の提供により、かなりの大学進学実績を残している学校もある。
- マンガやアニメ、声優、コンピュータ、音楽、福祉など、不登校の生徒が親しみやすく、個性的なテーマをコースとして設定し、楽しく学びながら新しい自分を発見したり、自信を取り戻すことによって、次のステップへの推進力となる授業を展開している。
- 必修科目以外に、ボランティアや国際交流、演劇、英会話など多様な選択課目を設け、また、体育祭や文化祭などの行事も充実させ、幅広い興味関心に応える配慮がされている。
- 不登校経験者が多く入学してくることから、おおむねカウンセリング体制は充実しており、担任による家庭訪問も積極的に行われている。
④高卒程度認定試験予備校(旧大検予備校)
不登校等の理由で「高校を卒業していない」あるいは「高校に入学しないで他の進路をめざしたい」という生徒のために、「高校卒業と同等以上の学力があることを認定するための国による検定試験」が、高等学校卒業程度認定試験(高卒程度認定試験/旧大検)です。
この試験に合格することを目的として、大学入試のレベルまで学力アップをはかる予備校が高卒程度認定試験予備校です。
高卒程度認定試験では、指定の8科目(「公民」で「倫理および政治・経済」を選択した場合は9科目)のすべてに合格すると、大学や専門学校などの受験資格が認められ、各種国家試験の受験でも高卒者と同等の扱いを受けます。
高卒程度認定試験は、年2回実施(8月と11月)されます。一度ですべての教科に合格しなくても、第1回目に合格した科目の試験は、第2回目の試験では免除されますから、第2回目では、第1回目に不合格だった科目だけを受ければよいことになっています。
ちなみに、2007年度(第1回・第2回合計)は出願者3万1,796人、合格者1万845人。合格者の最終学歴でもっとも多かったのは高校中退で、合格者全体の60.8%(6,593人)を占めています。
⑤フリースクール
フリースクールとは、不登校の生徒を対象とした民間の教育機関です。
文字どおり「自由な学校」ですから、施設の規模や教育環境、設備、指導内容などもさまざまですが、普通の学校と比べると小規模なところが多く、公的な援助も受けずに、主宰者のボランティア精神にのみ支えられて成り立っているスクールもあります。
しかし、いかにも学校然とした教育機関よりも、フリースクールのような家庭的な雰囲気のほうが、のびのびできたり、通いやすいと感じる子どもも多いので、実際に施設を見学するなどして、その子に合った場所かどうかを検討するとよいしょう。
なお、学校を休んでいる義務教育期間の子どもがフリースクールに通った日数は、在籍校の校長の判断によって、出席日数として認められることになっています。
フリースクールのネットワーク化をはかるための団体「日本フリースクール協会」では、電話無料相談なども行っています。
●日本フリースクール協会
TEL:03-3370-6779
WEB:http://www.japan-freeschool.jp/
⑥⑦⑧留学ほか
海外には、文部科学大臣が日本の高校と同じ教育課程をもっていると認め、「在外教育施設」と認定している高校(インターナショナルハイスクール)があります。
この「在外教育施設」の認定を受けた高校を卒業すれば、日本国内の高校卒業者と同等の資格が与えられます。あるいは、仲介団体を通じて、現地の公立高校や私立高校に留学することもできます。
留学の行き先で多いのは、やはり、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドといった英語圏です。留学先では、なによりも言葉の壁をクリアすることが重要になりますが、語学学習については、まず現地の語学学校で現地語を学んでから高校などに入学するケースと、現地語集中コースと一般の教科を並行して受講するケースがあるようです。
海外への留学は、今までしばられてきた世間の眼から解放され、誰も知らない新しい環境のなかで新規まき直しをはかりたい人には適しているといえるでしょう。異文化体験を通して視野が広がり、人間的に大きく成長するケースもあります。
言葉も文化も違う国での生活は、人によってはかなりのストレスとなることを覚悟しなければなりません。しかし、家族や同級生から離れることで、不登校という負いめがやわらいだり、日本とは違った価値観があることを身をもって学んだり、欧米の個性を尊重する教育が受けられるなどのメリットも見逃せません。言葉や生活習慣の違いを少しずつクリアすることによって、自分に対する大きな自信を身につけることも可能でしょう。
中学卒業後の不登校の子どもたちのための進路情報