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不登校Q&A

【質問2】 中高一貫校での不登校と進学問題

現在、中3の息子は、今年2月から不登校になっています。中高一貫校に通っており、ある条件をクリアできれば、高校進学は不可能ではありません。本人は、現在の学校への進学を希望しています。しかし、中間テストは自宅で受けましたが、再登校する様子もなく、友だちとの接触もありません。勉強もしていませんし、たとえ進学できたとしても、留年という不安もあります。

どのようにしたら、友だちと接触できるようになりますか。また、再登校するようになりますか。勉強面での不安についても、アドバイスをお願いします。なお、息子は家庭教師は嫌がっています。

【回答】田中雄一

ご質問に「ある条件をクリアできれば」とありますが、これまで不登校のお子さんについてご相談を受けてきた経験からいえば、だいたい学校側の出す条件は「出席日数を満たすこと」と「テストを受けること」の2点。この2点をクリアしてほしいという学校が、やはり多いんです。

たとえば、実際にご相談を受けたケースでは、小中高大の一貫校に通っていた女の子が中2の終わり頃から不登校になり、中3の1学期が終わる前頃に学校から「このままだと留年になってしまう」、留年を避けるためには「夏休みに登校しなさい」という条件を出されました。当然、その子にとってはかなりのプレッシャーになり、結局、この条件はクリアできませんでした。

その後、2学期になっても登校できなかったため、母親との面談時に、今度は「冬休みに登校すること」という条件を出されました。

そのため、この子は冬休みに頑張って2日登校し、さらに3学期の始業日にも無理して学校へ行ったのですが、そのとき担任の先生から「あれ? ○○ちゃんいるの?!」と言われ、そのひと言で翌日からまた学校へ行けなくなりました。

私のほうにご相談があったのは、不登校になってから比較的早い時期だったのですが、中高一貫校で中3ともなれば、授業のスピードが公立中学などに比べて非常に早いため、2?3カ月学校を休み、再び学校に行っても、授業についていくのが非常に難しい。それで、公立中学への転校を勧めたのですが、そのときは親御さんの強い希望もあり、「学校側の条件をクリアすれば、今の学校にそのまま通える」ということで、転校はしませんでした。最終的に公立中学への転校を決めたのは中3の3学期。そこで転校先の学校を卒業し、中学卒業資格を得て高校に進学したという経緯があります。

このように、不登校のお子さんが進路に直面したときにかかえる問題は、おもに学習面での不安、出席日数、そして、人とのかかわりなどですが、そうした面を考慮に入れた高校選びが非常に重要になります。そのときの参考になればと「進路選択のポイント10」を以下にあげておきましたので、ぜひご覧いただきたいと思います。

とくに学習面での不安はたいへん強いので、習熟度別に授業をしてくれるかどうか、基礎的なところからもう一度教えてくれるかどうかは、大きなポイントになります。また、不登校の子どもたちは人とのかかわりについても敏感になっていますので、学校の雰囲気や、その学校にどんなタイプの子どもたちが通っているのかなども、ぜひチェックしていただきたいと思います。

進路選択のポイント10

  • 01. 親の好み、希望する学校、考え方を一方的に押しつけない。
  • 02. 学校見学に行ったり、体験入学に参加して、校風や規律などが合っているか 雰囲気が合っているかを本人の目で確認する。
  • 03. 学力に不安を抱えている子どものために、その子の学力レベルに合わせて学べるカリキュラムを組んでいるか。
  • 04. 子どもたちの不安定な心の状態を、きめこまかにサポートしてくれる教育環境・体制が整っているか。
  • 05. 入学しても通えなくなってしまうケースに、どう対応してくれるか。(欠席日数・単位認定などへの対処)
  • 06. 不安を抱えながら通学する子どもたちや親のために、臨機応変に相談できるカウンセリング体制が充実しているか。また、医療機関とのネットワークが確立しているか。
  • 07. 体験学習や総合学習、クラブ活動や行事など、授業だけでなく、その子らしさが発揮できる場を数多く設けているか。
  • 08. 人間関係に不安をかかえている子どものために、友だちづくり、人間関係づくりに配慮したサポートをしてくれるか。
  • 09. 安心して学べる場、学校として機能する環境やシステムが確立しているか。
  • 10. 学校の方向性や特色が、子どもたちの夢、やりたいこと、なりたい職業などに合っているか。その一環として、大学や専門学校などへの進学状況なども確認するとよい。

【転入・編入の場合は、上記に加え、以下の点も考慮する】

  • 11. 転入したいときは、現在の学校に在籍したまま転入先を探すこと。退学は転入先が決定してからにする。
  • 12. 出席状況が悪くても悲観せず、可能性を追求する(OKな学校もたくさんある)。
  • 13. 転入・編入時、新しい環境にとまどう子どもの不安を解消し、安心して学校生活を送れるようバックアップしてくれるか。

【回答】海野 千細

 この中学3年生の息子さんは、10カ月くらいずっと勉強していないわけですから、おそらく「今から勉強して別の高校を受験しても、はたして受かるのだろうか」という不安がかなりあるだろうと思います。また、「新しい環境に入ってやっていけるのだろうか」という不安もあるでしょう。だから、「できれば、このまま中高一貫の高校に行けるなら行きたい」と思うほうが自然だろうと思います。親御さんのほうも、「せっかく中高一貫校に入ったのだから、なんとかやれるところまでやらせたい」と思うのも自然ななりゆきかなという気がします。

 しかし現実は、先ほど田中先生も話しておられたように、なかなか厳しいものがあり、また、中高と同じ学校に通い、さまざまなものを引きずっていくことで、ますます傷を深くしていく場合もありますから、非常に判断が難しいと思います。

 ただ、進路という面からいえば、本人さえ納得すれば、今の中高一貫校ではない、さまざまな進路がありうるわけです。ですから、私は進路の問題を考える一方で、まずはご家族のなかで話し合える関係をどうつくっていくかを大事にしていく必要があるのではないかと思います。

 おそらく、親御さんとこの息子さんが話をして、「あなた、これからどうするつもりなの?」というやりとりがあったとき、息子さんが黙り込んで、かたくなになってしまい、話にならないということが、ままあるのではないかと思います。そこのところで、息子さんとお父さんお母さんがもう少し話せるような雰囲気をどうつくっていくかが大きなテーマになってくるのではないでしょうか。

 これは、ほかのご質問にもからんできますが、実は、お父さんお母さんと普通に食事を一緒に食べられるとか、勉強や進路以外のことで普通に話ができるということが、一見たわいのないことのようですが、本当はいちばん大事なことなんです。ちょっと硬い言い方をすると、「人と一緒にいる安心感や信頼感を家族関係のなかで味わえる」ということです。ですから、親と話ができない、ご飯も一緒に食べられない、自分の部屋から出てこないというのは、家族関係のなかで親に対する不信感や怒りとか、今までのさまざまことが積み重なっていたりする場合もあります。そこのところを、どう和らげていくかが、まずひとつの大きなテーマになると思います。

 そうして、少し家族のなかでラクにつきあえるような関係ができてくると、そういう家族間の信頼関係や安心できる関係が土台になって、家族以外の人ともつきあえるようになってくるというふうに考えたらどうでしょうか。ご質問に「どのようにしたら、友だちと接触できるようになりますか」とありますが、これもまさにそういうことなんです。一見回り道のようですが、まず家族のなかで心を開いて、少しでも普通に話ができたり、普通に食事ができたりという関係をつくることを考えてみてもいいかなと思います。

 そういうなかで、本人との関係が少し落ち着いてきたり、あるいは現実に期限や締切りといったものがある問題については、本人に対して情報提供をしていったらよいのではないでしょうか。たとえば、「今の高校に残るとすれば、こういう条件が必要だ」とか「別の高校に行くとすれば、こういう高校なら通える可能性があるようだ」といった情報提供は、本人との関係の深まりに応じて出していくことが必要になるかと思います。

 今、中学3年というと高校進学まであと半年くらいですから、その間に関係を和らげていくこと自体、なかなか難しいかもしれませんが、私は、基本的にはギリギリまで迷っていいんじゃないかなと思います。迷うなかで現実のいろいろな条件が迫ってくると、話し合わざるをえなくなるといった場面も出てきます。そういうなかで、本人も現実に直面せざるをえないようなことも起きてくるでしょう。

 また、ご質問に「息子は家庭教師は嫌がっています」とありますが、自分の縄張りというか、家庭の領域に第三者を入れるのを嫌がるというのは、ごく自然なことです。お母さんとしては「塾に行かないなら、せめて家庭教師でも…」と考えたりするわけですが、だいたいは自分のことを第三者に知られたくないと思う子のほうが多いです。ですから、できれば本人から「こうしたい」「こうしてほしい」と言ってくれるといいんですが、そのへんはなかなか難しいかもしれません。

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