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登進研公式サイトトップ > 不登校Q&A > 質問5 高校進学を目前にして、突然、不登校になった中学3年生の男の子

不登校Q&A

【質問5】 高校進学を目前にして、突然、不登校になった中学3年生の男の子

今年9月の運動会が終ってから急に不登校になってしまいました。運動会の練習のときも、ため息をついているときがありました。息子は小柄ですが運動が好きで、ずっとサッカーを続けてきました。原因については、本人は何も言わず、担任の先生も見当がつかないということです。ただ、何となくいじめがあったような気配があり、本人は「どんなことがあっても学校には行かない」と言っています。

高校進学を目前にひかえての突然の不登校で、親はオロオロするばかりです。どうしたらよいか教えてください。

【司会】池亀 良一

この男の子の場合、不登校の背景に「いじめ」の問題があるようですので、同じ体験をもつB男くんのお話を聞いてみたいと思います。

【回答】B男くん

僕は小学校の頃、かなり目立ちたがり屋の性格で、それだけならたいした問題ではないんですが、クラスメイトにウソをついたりしていました。それが非常に反感を買ったらしくて、クラスメイト全員から無視されるということが半年くらい続きました。それでも、小学校はなんとか通って卒業しました。

それで、中学では学区が変わるので、こういう状況も変わるだろうと思い、元気にやっていました。学年委員長をやったりもしました。

ところが、中学1年の夏休みに、クラスの不良っぽいグループと小学校のときに私をいじめていたグループが、たまたまどこかで出会ったみたいで、夏休み明けから、その不良っぽいグループが、私の小学校の頃のことをあれこれ言っては、からかうようになりました。

授業中にそのグループが私をからかうと、授業を面白くしようとして、先生まで一緒になってからかいはじめて、クラスのみんなが大笑いするというようなこともありました。「授業を面白くするなら、ほかのやり方があるだろう」「ひどいな」と思ったことを、今でもよく覚えています。それは英語の先生だったんですが、そのせいで英語が嫌いになりましたね。それでも中学2年で不登校になるまでは学校にもちゃんと行っていましたし、そうしたことが不登校の直接の原因だったわけではありません。

母には、そういうことを100%つつみかくさず話していました。いじめられていたことも、また、その原因が僕にあったのかもしれないという罪悪感や自己嫌悪にさいなまれたことも含めて、全部話しました。懺悔っていうか、「母にはすべて知っておいてほしい」という気持ちから話したんだと思います。

【回答】小澤 美代子

まず、9月の運動会ですが、体が疲れると心も疲れて不適応になりやすいということは、ぜひ知っておいてほしいと思います。大人でも働きづめに働くと、どこかでダウンしてしまう。それと同じようなことが、当然、子どもにも起こってきます。9月の残暑のさなかの運動会は非常にきつい。とくに中学では、けっこう気合いを入れて練習するところが多いので、そこでエネルギーを消耗してしまう。そういう元気のないところに、ちょっとしたことが起こるとつまずきやすいということが、ひとつあったのではないかと思います。

それから「練習のときも、ため息をついていた」とありますが、このお子さんは小柄だということで、中学生になるとかなり大柄な子もいますから、練習のときにこづかれたり、からかわれたり、とくにこの年代だと、やや性的なからかいがあった可能性もあります。ご質問を読むと、そうしたことがあった雰囲気を色濃く感じます。でも、子どもにもプライドがありますから、だいたいそういうことは言わないことが多いんです。

さらに、いじめがあった気配があるにもかかわらず、原因について担任の先生も見当がつかないというのは非常に困ったことです。

私は、もともと高校の教員を20年くらいやっていて、その後、教育委員会の相談センターに行ってカウンセラーを16年ほどやっていました。その経験から、学校側と相談センターの両方の視点でこの状況をみてみると、学校にいるとなかなか見えなかったり、うまく解決できないこともあるんですが、相談センター側からみると、「どうしてこの状況をなんとかしてくれないの!」と言いたくなることがすごく多いんです。

とくに、いじめの対応については、だいたい学校で解決できずに、こじれたり不登校になったりというケースが相談センターに上がってくるようですが、センター側からすると、学校の先生方がもう少し迫力をもって、子どもたちに「悪いことは悪い」とどうしてはっきり言ってくれないのかと思うことがたくさんあります。

おそらくこの先生も、いじめがあったことを薄々は感じていたと思いますが、そこを突っ込んでいないんですね。そして、結果的に、この子は「どんなことがあっても学校には行かない」という状態になってしまったわけです。

私は、不登校について「急性型」「慢性型」という言い方をするんですが、この子のように突然行かなくなるのは急性型で、慢性型と比べると不登校のなり方が非常に違います。それまでは元気で、あるときパタッと行かなくなった場合は、そこまでの元気があるんです。ですから、そこで短期間にうまく解決すれば、回復もすごく早い。ところが残念ながら、この子の場合、急性型にもかかわらず、そこで解決されないままに不登校に至ってしまったという状況が読み取れます。そうなると、これからもう一度、担任になんとかしてもらって学校に戻るということは、たぶん難しいだろうと思います。

 では、今何ができるかというと、なんとか中学に戻って少しでも出席日数をかせぐというよりも、この時期なら、もう高校に目を向けたほうがいいでしょう。

私自身も相談機関で不登校のお子さんのご相談を受けたときは、1学期くらいまでは、「戻れれば、戻ったほうがいいかもしれない」「その子の状況がよくなって、学校が楽しければ、やはり戻ったほうがいいだろう」と考えて、そのための努力をずっと続けます。ただし、夏休みを境に、中3の場合は「高校進学」に向けて頭を切り換えます。

なぜなら、その子にとって2学期になってから、学校へ戻る意味があるのかということです。頑張って何日か登校したとしても、学校へ行ったことのプラスとマイナスを考えると、あまりプラスはありません。出席日数が何日か増えるけれど、2学期の中3のクラスというのは非常に殺気立っていて、友だちに優しくするような余裕もあまりないので、行けば傷つくという可能性がすごく高い。戻ることのプラス・マイナスを考えると、マイナスのほうがはるかに大きいだろうという判断を下します。

ですから、私たちとしては、2学期からはもう学校へ戻ることを視野に入れず、その子の次の将来、高校やさらにその後の人生を考えて、今、何をするかというふうに頭を切り換えてしまうことが多いです。

そして、では、本人は高校へ進学したいのか、現実的に体力面や学力面で進学が可能なのかを検討したうえで、進路を考えていきます。

このとき、学校側には、進路情報、たとえば、いろいろな説明会とか保護者面談などの連絡は、ほかの子と同じようにちゃんと連絡してもらうようにします。説明会などに行く行かないはこちらの自由ですが、ときどき「学校に来れないから」あるいは「本人をあまり刺激してはいけない」といった感じで、情報が全然来ないことがあるんです。ですから、進路情報はとりあえず親のところまでは届けてもらうようにして、そのなかで取捨選択して本人に伝えるようにするとよいでしょう。

それから、この時期(11月)になると、ちょっと遅いといえば遅いんですが、受験校をしぼっていきます。子どもたちは、やはり具体的な学校名が出ると頑張れる。漠然と受験というだけでは勉強が手につかないので、だいたい3校くらいにしぼって、「そこに入れるといいね」みたいな話をするわけです。実際に今は、全日制、定時制、通信制、単位制、サポート校など、非常に選択の幅が広がっています。

最後に、そうやって少し動けそうになったら、勉強の手立てをしていきます。問題は、本人のやる気をどうやってかき立てていくかですが、たとえば私がこの子の親だったら、「あなたのせいじゃないのに学校に行けなくなったのは悔しいでしょう? だから頑張って見返してやりなさい」みたいなことを言うかもしれません。ただ、これを親側の悔しさで言ってはダメ。この子の場合、どんな状況があるにせよ、自分のほうから撤退してしまったわけですから、「本来ならちゃんと学校に行けたはずなのに悔しい」といった気持ちがあるなら、その気持ちを汲み取ってあげて、そんな言い方をしてもいいでしょう。

あまり通りいっぺんに「高校に行かないと、ちゃんとした大学にも行けない」とか「大学に行かないと、まともな就職もできない」とか、紋切り型のことを言ってもやる気にはつながらないので、その子にとってのポイントになるものをどうつかめるかが大事です。

たとえば、動物が好きだったら「獣医さんになるのもカッコイイかもしれない」とか、「獣医さんが難しかったら、そういう専門学校もいっぱいあるから、きっと夢はかなうよ」「シーワールドみたいなところでイルカの調教とかできるかもしれない」というように、その子の気持ちがちょっと開くような、「じゃあ、やってみようかな」という気持ちになるようなことを言ってあげるといいと思います。そういうことは、親が一番よく知っているわけですから。

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