小学生6年という節目を迎えて
中高一貫校での不登校と進学問題
自分の不登校について誰かに話すことを非常に嫌がる小学校6年生の女の子
いま通っている学校をやめようと思っている高校1年生
高校進学を目前にして、突然、不登校になった中学3年生の男の子
「中学に通わずに勉強できる方法はないの?」という小学6年生
「自分は不登校だから大事に扱って」と主張する中学1年の女の子
内申のない子どもに開かれた進路とは
“集団”のなかに入っていこうとしない高校生
「高校どうしようかな」と口にするものの、 まったく動き出す気配のない中学3年生の女の子
大検(高等学校卒業程度認定試験)を受けて大学に進学したい
登校刺激をすると大声を出したり、ものを投げたりする高1の女の子。見守っているだけで、転機はくるのか
小中高とずっと不登校ぎみで、サポート校に転入後も休みがち。 将来、自立できるのかと不安
高校卒業後の進路問題
無理して学校に行っているように見える中学1年の男の子
【司会】池亀 良一
ご質問のなかに「サポート校に転入」というのが出てきますので、B男くんに、サポート校での体験を聞いてみたいと思います。
【回答】B男くん
中3のときに、養護教諭(保健の先生)からサポート校を3校紹介してもらって、そのうちの1校に入学しました。
中学のときに不登校だったのが、サポート校に入ったからといって、いきなり毎日行き出すとは絶対に限らないわけで、高校1年のときは連続して1カ月弱休んだのが2回くらい、2年のときは学校には行きましたが、教室にも入れない状況で、遅刻と早退をくり返しながら、進路相談室みたいなところでレポートを書くというかたちで勉強していました。
3年のときは、遅刻・早退が多くて、たとえば、月曜日の1限に数学があったら行かない、水曜日の1限に日本史があったら1限から行く(笑)というように、自分のペースをつかんで通っていました。まあ、ある意味、自分で自分の時間割を作っていたようなもので、高校3年のときは、すでに大学1年生の気分だったかもしれないですね。
担任がいい先生で、毎日毎日、母に電話をしてきてくれたので、休んでも学校とつながってるなという安心感は、いつもありました。
【回答】小澤 美代子
このお子さんは、小中高と、ある意味で慢性型の不登校といえます。ですから、何かテコ入れをしたからといって、パッと変わるタイプではないだろうと思います。
ただ、ご質問に「これまで小中高とすべて休みがちだったことを考えると」とあって、確かに否定的にとればそうなんですが、おそらく、このお子さんはとても内気で、ゆっくりペースで、なかなか集団の速いペースになじめないタイプの子なんだと思います。それが小学校で改善すれば、それはそれでいいのですが、今までずっとこのペースで来ていることを考えると、おそらく、これがこの子本来の持ち味だというふうにとらえるべきではないかと思います。ですから、そういう本人のタイプをよく見てあげることが大事です。
それから、「将来自立できるのかと不安になります」というところで、何をもって自立とするかということ。私は、今年4月から女子高でスクールカウンセラーをしているんですが、女性の自立というとき、本当に何が幸せなのかということをよく考えます。その女子高は進学校なので、先生方の意識としては、女性も当然のように進学して、仕事をもって生きていくのが当たり前という雰囲気なんですね。
でも、一人ひとりのお子さんをみていると、高校を出たら、あとはゆったり家にいて、習い事をしたりして、いい人がいたらお嫁さんになって、いいお母さんになりたいなと思っている子も、昔よりは少ないかもしれないけれど、やっぱりいるんですね。
この子も「高校3年になると進路を決めなくてはいけないから嫌だ。勉強も嫌いだし」と言っているように、もう高校まで来たから、これ以上勉強するのはあまり気がすすまないと思っているのでしょう。そういう子が進学したとしても、そこでとくにやりたいこともないわけで、やっていけるのかどうか。
それよりも、この子にとって「自立」とは何か、どこを目指すのかを考えたほうがいいのではないかでしょうか。この子が「勉強も嫌いだし」というのも、別に怠けではなく、勉強は自分の好みではないということだと思います。そして、「気がつくと家事をしておいてくれる」というように、よく気がつく、優しい性格がみてとれます。
実は、私も家にいるのが大好きで、専業主婦に憧れていたんですが、主人が転職ばかりしているもので、こんなはめになってしまって(笑)。ですから、高校生の女の子がそういう希望をもったとしても、決して悪いことだとは思わないし、もし本人が望んでいるなら、そういう生き方もすごくいいのではないかと思います。
ぜひ、ご本人とよく話をされて、何も進学するばかりが道じゃない、いろいろな生き方があるというようなことも伝えて、この子にとって、できるだけ無理のない方向を探っていけたらいいかなと思います。人生80年、この子にとってはあと60数年もあるわけですから、ゆったり、ゆっくり考えさせてあげたらどうかなと感じました。