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登進研のチエブクロウ(10)HSCの子どもへのかかわり方
「登進研のチエブクロウ(知恵袋)」は、不登校について多くの親御さんが疑問に思っていること、悩んでいることを取り上げ、疑問解消や問題解決のヒントとなる情報をご紹介するページです。
これらの情報は、これまで登進研が行ってきたセミナーの講演、体験談などから採録したものです。お子さんへの理解を深め、よりよいかかわり方を考えるうえで、お役立ていただければ幸いです。
Q. HSCの子にどう対応したらよいのか?
お母さんからの相談
中1の息子は、小4の頃から学期の大半を休むようになりました。登校できる日もあり、完全な不登校ではありませんが、担任が変わるたびにストレスで体調不良になったり、体力低下による風邪で休んだことをきっかけに欠席が長期化する場合が多いです。
ただし、本人は悲観的になったり、将来への不安を抱いているようには見えません。いろいろ調べて、HSC(Highly Sensitive Child=人一倍敏感な子ども)ではないかと思っていますが、打開策が見つかりません。このような子にどう対応すればよいでしょうか。
A. その子の特性を理解することから
小林正幸(東京学芸大学名誉教授)
私がかかわったお子さんで、小学3年生に進級したら急に不登校になった男の子がいました。
最初はみんな不思議がったそうです。それまで元気に学校に通っていたし、2年生からの持ち上がりで担任の先生もクラスの友だちも変わらないのになんで?と。
理由は教室が変わったことでした。2年生のときと比べて、とても日当たりがよく、いい教室だったのですが、その子は日射しが明るすぎてつらかったそうです。じつは、この子には「光刺激」に対する過敏性があったのです。
その後、この子は光の加減を調整できるサングラスを使うようになりましたが、それでも小学校の間はかなり苦労しました。現在は中学校に進学し、順調に通っています。自分で環境を選べる通信制の学校にしたからです。電車にもなかなか乗れなかったのに、今は乗れています。
この手の症状は心理的な影響が大きく、不安などが高まると症状が強く出ます。いま比較的順調なのは、小学生の頃に比べて気持ちが安定しているからでしょう。
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HSC(Highly Sensitive Child)は病気ではありません。発達障害と重なっているケースもありますが、別のものです。
HSCをひと言であらわすなら、「過敏性」と言っていいかと思います。ただし、私たちがふだん口にする過敏性とは違うレベルのものと考えてください。光や音などのささいな刺激に対する感受性が非常に高いのが基本の症状です。そのため、お祭りは好きだけど太鼓の音がうるさいから行けないということが起こります。また、感受性が高いために過度に興奮しがちで、その結果、疲れやすいのも特徴のひとつです。
学校というのは、子どもたちのおしゃべりや歓声でかなりうるさいですから、こういう子にとってはつらい環境といえます。
もうひとつの特徴は、高度な共感性をもっているということです。感受性・共感性が高いために人のつらさがわかりすぎてつらい、疲れるということが起こりやすいのです。
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ご質問の男の子については、この子に合うように環境を調整することが基本になります。まず、静かで落ち着いた環境が必要であること、そして、監視されているような環境には置かないこと。
さらに、この男の子がどうかはわかりませんが、一般的にHSCの子にとっては、人と交わること自体が「うるさい環境」に入ることですから、社交性に乏しくなりがちです。それを直そうとしないことも大切です。先ほどお話ししたように共感性が高いので、無理に人と交わろうとすると、人のことがわかりすぎてつらくなってしまいますから。
これらのことからHSCの子どもたちは、自分ひとりで処理できることを好む傾向があり、得意なのは「とても気がきく」ということです。ですから、そういう仕事、たとえば静かで業務内容も安定しているホテルのフロント係のような仕事に向いています。お客さまの様子にすぐに気づいて、困っていることがあればパッと動いて環境を整えてあげる。そんな仕事を目指すといいかもしれません。
その子に合った仕事を見つけるには、まず、どんな資格やキャリアが必要なのか、場合によっては、学校なんか行かなくてもいいという仕事が世の中にはたくさんあるということも含めて、情報を集めることが大切です。すると自分の将来が15年くらい先まで見えてきますから、子どもの気持ちはものすごく落ち着きます。専門的なキャリアカウンセラーの知恵も借りながら、自分の特性に合った仕事を選ぶようにアドバイスしてあげてください。