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登進研のチエブクロウ(9)起立性調節障害と不登校
「登進研のチエブクロウ(知恵袋)」は、不登校について多くの親御さんが疑問に思っていること、悩んでいることを取り上げ、疑問解消や問題解決のヒントとなる情報をご紹介するページです。
これらの情報は、これまで登進研が行ってきたセミナーの講演、体験談などから採録したものです。お子さんへの理解を深め、よりよいかかわり方を考えるうえで、お役立ていただければ幸いです。
◇起立性調節障害とは?
「子どもが朝なかなか起きられず、頭痛や腹痛もあって学校に行けなくなった。もしかして最近よく聞く起立性調節障害では?」と心配される親御さんが少なくありません。
当研究会にも、「起立性調節障害って何?」「不登校と何か関係があるの?」「もし起立性調節障害だったら、どんな対応をしたらいいの?」など、さまざまな疑問・質問が寄せられています。
そこで、次のような視点から、起立性調節障害と不登校について考えてみたいと思います。
- 起立性調節障害という「病気」をどう考えればいいのか。
- 一般的な不登校と起立性調節障害による不登校は、別のものと考えるべきか。
- 起立性調節障害による不登校の場合、何か特別な対応が必要なのか。
◇病気の特徴と症状を理解し、その子が安心して過ごせる環境を整える
齊藤真沙美(東京女子体育大学・東京女子体育短期大学准教授)
最近よくメディアでも取り上げられるようになったので、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、「起立性調節障害」とは、立ちくらみ、失神、朝起きられない、倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などの症状をともなう自律神経の機能不全のひとつです。
思春期のお子さんに起こりやすく、軽症も含めると小学生の約5%、中学生の約10%にみられるといわれています。身体的な疾患ですから、本人の頑張りでどうにかなるものではありません。
起立性調節障害の症状は、自律神経系のバランスが崩れ、立った状態で体の上のほうに十分な血液が送られない、つまり血圧が低下した状態になることで起こります。思い当たる症状があるときは医療機関を受診し、症状に合った対応をすることが望ましいでしょう。
起立性調節障害には、症状によって主に4つのサブタイプがあるとされており、それを調べるための検査を行う場合もあります。症状に応じてお薬の処方も行われますが、これだけでは十分な効果が得られないといわれています。
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起立性調節障害の症状を聞くと、不登校のお子さんの場合、多くの親御さんが「うちの子もそうかも…」と思われるかもしれません。実際に不登校の約3~4割にみられるというデータもあります。
そもそも「不登校」とは、学校に行けない「状態」をあらわす言葉ですから、その原因や症状はそれぞれ違います。心と体は密接に関連しあっているので、起立性調節障害と不登校の関係も単純な因果関係でとらえることはできません。そして、たとえどちらが原因でどちらが結果かを明らかにできたとしても、支援にはそれほど役立たないことが多いのです。
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日常生活での工夫としては、以下のことがあげられます。
- 起き上がるときはゆっくり起き上がる
- 静止して立った状態を1~2分以上続けない
- 水分と塩分を多めに摂る
- 1日30分程度歩く
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そして、もっとも重要なのは、疾患や症状の理解と環境調整です。これは一般的な不登校への対応で重視されることと同じです。怠けや根性のなさととらえるのではなく、身体疾患であることを、子ども本人と周囲の人々がきちんと理解する必要があります。
学校に行かないことを責められることによって症状が悪化するケースもあります。本人も「自分が悪い」と自分を責めていることが少なくないので、診断名がつくことで少しホッとする子もいます。
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起立性調節障害の場合、朝、血圧が上がらないのでふらふらするといったことが起こるので、毎朝血圧を測って、その日の状態を可視化していくことにより、「この血圧だと今日は無理をしないほうがいい」というように、自分でコントロールすることも必要になってきます。
朝、血圧を測定し、その状態により登校するかどうかも含めてその日の予定を立てることで、親子ともに葛藤や衝突に苦しまなくなった事例もあります。
ストレスも大きな影響を及ぼしますので、どのような生活、どのような登校の仕方がいいのかを検討する環境調整も必要です。自分を理解してくれる人がいる安心できる環境で、エネルギーをためることが、症状の改善にもつながるのです。