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高校選びに関するアンケート調査結果 ― 通信制高校在籍者の保護者100人に聞きました
*2019年9月29日に開催された登進研バックアップセミナー105の第2部「高校選びに関するアンケート調査結果」の内容をまとめました。
【高校選びに関するアンケート調査の概要】
*調査方法:質問紙(郵送)によるアンケート調査/調査時期:2019年8月
*調査対象:都内通信制高校在籍者の保護者 約300人/回収結果:98件(回収率33%)
講 師 |
海野千細(八王子市教育委員会教育支援課心理相談員) 小栗貴弘(跡見学園女子大学心理学部准教授) 荒井裕司(登進研代表) |
※講師の肩書きはセミナー開催時のものです。 |
1. なぜ通信制高校を選んだのか、その理由を教えてください(複数回答)
解説:小栗貴弘
高校選びで大切なのは、「入れる高校」よりも「通いつづけられる高校」であることです。アンケート結果から、高校に入ってきた生徒が「不登校であったこと」を不安に感じていたことがわかります。
回答の1位「自分のペースで通えたり勉強ができるから」、3位「毎日登校しなくても高校卒業資格が取れるから」、4位「授業や勉強のプレッシャーが少ないから」は、登校や学習についていかに自分のペースが守れるかという内容になっています。一方、2位「同じ経験(不登校)をした生徒が多いから」は人間関係に関することで、自分の気持ちをわかってもらえる存在として同じ経験のある友だちを求めていることがわかります。
「その他」の回答のなかには「転入生が少ない学校は、転入できたとしても新しい人間関係を築くのが難しそうな気がしたから」という書き込みがありました。たとえば、小中高一貫校に中学から入学した場合、内部進学者のなかで友だち関係や人間関係ができあがっていて、外部入学者がなじめず、仲間はずれにされて不登校になったケースがありました。それは転入生にとっても似たような状況になる場合があります。その点、通信制高校はいつでも転入生を受け入れているため、中高一貫校や公立高校などで留年か中退の選択に直面した子どもたちが新規まき直しのために転入してくるケースが珍しくありません。そのため、転入生でもなじみやすい、転入生にもやさしい環境があるのかもしれません。
2. 通信制高校以外に、候補として検討した高校はありますか?(複数回答)
解説:小栗貴弘
まず、通信制高校以外にも、不登校生の受け皿になっている高校が増えてきていることがわかります。具体的には、1位「チャレンジスクール等の公立の単位制高校」、3位「サポート校」、4位「定時制高校」などが代表的ですが、こうした高校は不登校経験者に対するサポートが充実しているともいえます。一方で、2位の全日制高校も候補として検討しながら、最終的には支援体制(学習面・メンタル面)が充実していて、不登校であった生徒でも通いつづけられる高校かどうかを軸に、高校選びをしていることがわかります。
3. 高校の情報はどのように集めましたか?(複数回答)
解説:海野千細
進路選択のための情報収集については、2位「インターネット」を利用している人が70%強と多数を占めています。スマホなどIT環境が整い、インターネットを使いこなすのが一般的な時代なのだなとあらためて感じました。しかし、ネットよりもさらに多いのが、1位「学校見学・説明会」に足を運んだ人で、80%近くいます。確かに学校や先生の雰囲気など、ネットの間接的な情報だけでは読み取れない部分が多々ありますので、ぜひ自分の目や耳で確かめる直接情報を大事にしてほしいと思います。また、学校に出向くことは、通学時間帯の電車、バス等の混み具合や乗り換えの状況、交通費などを確認することにもつながります。
「カウンセラーから」「知人から」「講演会やセミナー」「在籍校の先生から」など、それぞれ10%前後の保護者が、信頼できる人とのつながり(口コミ)から学校情報を得ていることもわかりました。さまざまな情報源が増えている現在、信頼できる人からの情報も十分参考になるかと思います。
4. 学校見学や学校説明会は、どなたと何校くらい行かれましたか?(複数回答)
解説:海野千細
学校見学や学校説明会に誰と行ったか?では、「本人と一緒に」が70%で最多です。登校するのは本人ですから、本人自身が見学したり説明会に参加できれば、それに越したことはありません。ただ、時期によっては、お子さんの心の準備が整っていなかったり、途中で帰ってきてしまうようなことも起こります。でも、そうしたことを繰り返しながら、だんだんと心の準備が整っていく、と考えたほうがよいでしょう。
何校くらい行ったかでは、1位「3校」、2位「4校」、3位「2校」で、合わせて全体の60%強となっています。集めた間接情報のなかから、ある程度校数を絞り、見学したり説明会に参加しているのかなと思いました。その一方で、1~2%ですが、10校、15校、20校という方もいます。ワラにもすがる思いだったり、ピンとくる学校になかなか巡り合えなかったのかもしれません。
なお、「その他」のなかには「保護者のみ5校、本人と一緒に2校」という記述がありました。これは「最初は保護者だけで5校見学し、候補を絞ってから本人と一緒に2校見学」ということを意味しており、本人の負担軽減という側面でも理想的なあり方なのではという感じがしました。全体的には5校以内という方が約80%という結果になっています。
5. 学校見学や学校説明会は役に立ちましたか?
役に立った 95%
役に立たなかった 4%
【「役に立った」の理由】
- 本人が見学することで、自分で決めることができた
- 学校が生徒目線で真剣に取り組んでいる姿勢が伝わってきた
- パンフレットなどでは伝わらないもの(先生方の熱意、学校全体の雰囲気など)が感じられた
- 生徒よりも教員やスタッフの雰囲気を知りたかったので
- 同じ通信制でも生徒や学校の雰囲気がまったく違うことがわかった
- 進路合同説明会では自分の学校をアピールするところが多いなか、本人の話を聞いてくれる学校があり、誠実で生徒思いの学校という印象をもち、その学校の見学を行い、最終的にその学校に決めた
*
- 制度的なこと、カリキュラムについても個別に質問ができた
- 先生に直接、不安なことを質問できるのでよかった
- 在校生や保護者の話を聞いて、どのような学校生活を送れるのか、とてもリアルに想像ができた
- 本人の希望や置かれている状況の把握、進学後の予想ができたから
- 実際に通えるのかシミュレーションしやすかった
解説:荒井裕司
学校見学や学校説明会については、「役に立った」95%に対して、「役に立たなかった」はわずか4%でした。役に立った主な理由は上記で紹介したとおりです。
学校説明会という学校側が設定した日ではなく、普通の日に行ってふだんの学校生活の様子を見せてもらうと、より“本当の姿”がわかるかもしれません。お子さんによって、こぢんまりとアットホームな雰囲気の学校のほうが落ち着く場合もあれば、学校然とした環境を好む場合もあるので、実際に足を運んで、学校の様子を肌で感じることはとても大切です。
学校見学=学校説明会+面談と考えて、お子さんに関して不安なこと、気になっていることをどんどん面談で確認してみることをおすすめします。ちなみに、学校見学や学校説明会が「役に立たなかった」と答えた人の理由として、「入学してみないとわからないことがあった」という記述がありました。確かにそうした面もあるとは思いますが、事前情報、とくに自分が行って、見て、聞いて、感じる直接情報は重要です。後悔しない進路選びのためにもぜひ学校見学などの機会を利用していただきたいと思います。
6. 今の学校に決めたのはどなたですか?
本人 48%
親子で話し合って 46%
保護者 4%
解説:荒井裕司
今の学校に決めたのは誰か?については、「本人」48%、「親子で話し合って」46%、「保護者」4%という結果でした。「候補がいくつかあって迷っていた娘さんが、たまたま近くまで来たので寄ってみようと、お母さんと一緒に学校見学をしたところ、その高校が気に入って、『ここに通いたい!』と即決したという話を聞きました。あまりの決断の速さにお母さんもびっくりしたそうですが、自分に合っているかどうかを見極める子どもたちの察知能力は鋭いものがあります。それを信じてサポートしてあげたいものです。
7. 学校を選ぶ際のチェックポイントや決め手になったことは?(複数回答)
解説:小栗貴弘
1位「不登校に理解がある」は、不登校のお子さんにとって大前提といえます。さらに、「自宅から近い」と「自宅から遠い」は真逆ですが、前者は「自宅から近いほうが通学時間が短くて通いやすい」、後者は「自宅から近いと、中学の同級生に会いそうなので、遠いほうが通いやすい」ということかと思います。通学でいえば、電車が上りか下りかも大事です。
「学校の雰囲気」や「好きなコースがある」などは、本人の関心やなじみやすさがポイントになっているといえます。他方で、「学習支援」や「進路実績」では、卒業後のことを気にしていることがわかります。なお、「その他」には、「安心して任せられる学校だと思ったから」「きめ細かなサポートをしてくれる学校はなかなかないと思ったから」などの記述がありました。
お子さんや保護者の考え方によっても、チェックポイントは異なります。たくさんのチェックポイントのなかから、「ここはどうしても外せない」というポイントを整理して、それを満たしているか否かで比較検討してみることも大切かもしれません。
8. 入学前と現在で、お子さんの様子は変わりましたか?(複数回答)
変わった 87%
変わらない 14%
【どのように変わったか?】(自由記述)
- 中学校の頃は教室に入れなかったが、今は教室で勉強できるようになった
- 毎日、学校に行くようになった
- 遅刻しても行こうとする姿勢が出てきた。前の学校では遅れたら行けず、完全に休んでしまっていた
- 学校の影響かわからないが、自分なりのペース、自分なりの考えで少しずつ行動できるようになった。少なくとも以前の環境では不可能だったことが今の学校なら許されることの意味は大きいと思う
- 自分から学校に行くための調整をしたり、部活を決めたりした
- 学校に通うことにストレスがなくなってきている
*
- 同じ経験をした生徒が多く、自分は特別(みんなと違う)だと思わなくなった先生に対して信頼感を持てるようになってきた
- 表情が柔らかくなりマイペースになった
- 明るくなった。積極的、意欲的になった。友人と話せるようになった
- 友だちができて明るくなり、親以外の人と出歩くにようになった
- こだわりの強いところがほぐれて、穏やかになった
- 人づきあいが増え、遊びに行くなど学生らしい生活をしている
- 勉強や登校にプレッシャーがないせいか気持ちが前向きになった
- 自分に自信がもてるようになってきた
- 中学校時代に何もできなかったのに、部活動で一所懸命になっている姿は別人のように見える
*
- 少しずつ、ゆっくり、のんびりではあるが、考え方、心が成長している
- 自分の特性や将来について話をするようになった
- 自分がやりたいことに臆することなくチャレンジできるようになってきた
- 自分の将来を具体化し、それに向かって進学を考えている
【どのように変わっていないか?】(自由記述)
- 2年からまた通えなくなってしまった
- また不登校になり、緊張や不安が強くなった
- 相変わらずマイペース
- 通学する意欲がない
- 遅刻が多くなった
- 入学当初の元気がなくなり、欠席が増えた。期待感が大きすぎたのか、理想と現実のギャップに苦しんでいる
- ゲーム依存状態で時間やお金の管理ができない
- 学校への不安より同世代への不安がまだ大きい
- 朝起きられるのに、行かなくてもよいと思うと朝起きない
解説:海野千細
入学前と現在でお子さんの様子が変わったか?については、「変わった」87%に対して、「変わらない」は14%でした。では、どのように変わったのか、どのように変わらないかについては、上記で紹介したとおりです。
長い不登校経験を経てきたわけですから、出席を前提としない、つまり、自分の状態に合わせて通学したり、休むことができる通学型の通信制高校に入学したとしても、疲れが出て、再び不登校に戻ったり、回復状況に陰りが見えはじめるお子さんもいらっしゃるでしょう。
問題はそうした状態におちいったとき、通信制高校の先生方がどんな対応やサポートをしてくれるかということでしょう。そこにこそ学校の本質があらわれるような気がします。入学前であれば、お子さんが元気を回復できないときに、どんな配慮をしてくれるかを確認してみてください。
「どのように変わったか」という回答で、「先生に対して信頼感を持てるようになってきた」「友人と話せるようになった」「人づきあいが増え、遊びに行くなど学生らしい生活をしている」などの記述からは、人に対する安心感や信頼感が回復してきていることが読み取れます。その結果、「部活動で一生懸命になっている姿は別人のように見える」「自分がやりたいことに臆することなくチャレンジできるようになった」「自分の将来を具体化し、それに向かって進学を考えている」など、元気にあふれ、物事に対する興味関心が高まったり、将来への意欲が湧いている様子につながっているのかもしれません。
そうした変化は、通信制高校に入学したことによって、自分の力や価値を見直すさまざまな機会に恵まれ、これまで傷ついてきた自己信頼感や自己肯定感が徐々に修復されつつあることのあらわれと考えることもできると思います。
このように、「どのように変わったか」という回答には、新しい教育環境にうまくなじめたプラスの結果が、「変わっていない」という項目には、新しい教育環境になかなかなじめない状態があらわれています。
9. 現在、不登校のお子さんがいる親御さんに、高校選びについてアドバイスするとしたら、どんなことを伝えたいですか?(自由記述)
【主な書き込み】
- 学校選びは本人が行きたいと思える学校を見つけてあげてほしい。保護者からの「行かされ感」ではなく、本人が「行きたい感」がないと続かないと思う。
- とにかく本人が感じるもの、納得できるがどうかが大切。親が先のことまで考えすぎると、本人にとって最良の選択ができなくなる。その時点での本人の納得感を大切にすることが必要だと思う。
- 本人が安心して通える学校を、本人の意志を尊重して選んだほうがよいと思う。入学してからの本人の気持ちが違ってくるように思う。
- とにかく子どもに寄り添って、本人が希望する高校に行くこと。ひとつでもやりたいことを見つけられるように応援して、高校で何かやりがいや楽しみを味わえるように。進路はその後についてくると思う。人は生きていくうえで、目的、目標が必要だと思う。
- 学校選びは親が良かれと思っていても、本人が納得しないと、後々問題になることがある。わが子はひきこもりでなかなか外に出られなかったが、いよいよ学校見学にでも行かないといけない時期になると、やっと学校見学に行った。本人の目で見て、決めさせることが大事だと思う。
- 本人が一番行きたいところに通わせてあげること。そのためには、本人が学校説明会や学園祭などに実際に足を運び、雰囲気を肌で感じることが大切だと思う。
- 可能であれば、本人と一緒に学校見学や説明会に行くこと、在校生の話を聞いてみること、カウンセラーなどからも情報を収集すること。
- 通信制でもいろいろな学校があるので、とにかく足を運んで決めてほしい。進学を目指す通信制高校では10分遅刻するだけで入室禁止になるところもあった。
*
- 中3になると焦る気持ちが出てくるが、焦ってもいいことはひとつもないので、親も不安な気持ちを話せる人をつくっておくといい。
- 焦らないこと。なるようになるとドンと構えるくらいでないと親が潰れてしまう。可能であれば本人に選ばせてあげる。一緒に学校の様子を見られる機会があればなおよい。
- 全日制で単位不足のために進級できなくても、通信制に転入するなど選択肢はいくつもあるので、目先のことで不安になりすぎないでほしい。子どもが一番不安だと思うので、焦らせたり、責めると逆効果になる。
- 親が先回りしすぎず、本人にとって過ごしやすい環境を本人で選ぶことが一番大事。また挫折しても、見守り支え続ける大らかさが求められるが、ともに成長するつもりで気長にがんばってほしい。
- 強制しない、追いつめない。高校に行きたいと言い出すまで待つのもよいかも。
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- 最初は保護者のみで学校を回り、候補を絞ってから本人と一緒に2校くらい見学するのがよいと思う。
- 子どもに選ばせるのは大変なので、親が情報を集め、子どもが安心して通える環境を確かめて、背中を押してあげることが大切だと思う。
- どんなペースで登校したいのか話し合い、お子さんが生活しやすい学校を何校か見つけてあげて、最終的にはお子さんに選ばせてあげてほしい。
- 不登校は誰にでも起こり得ること、問題行動ではないことを家族が理解し、残りの中学校生活を堂々と過ごせるようにしてあげてほしい。「うちの子は通信制高校しか行くところがない」といった悲観的な考え方や、「環境が変われば高校は通うだろう」という考え方は、まずやめたほうがいい。学校に通い続けることにとらわれないで、通信制高校、サポート校、定時制高校、チャレンジスクールなど、学びのスタイルは多様なので、お子さんにとって負担がない登校、授業形態などを比較して、お子さんと一緒に選んでほしい。
*
- 不登校なので、休んでいるときにどんな対応をしてくれるかが大事。通信制の場合は、卒業や進級をするためのレポート提出などについて詳しいことを聞いておくことが大切。入学前に何度か学校に行き、先生に話を聞いてもらうことも大切。
- 学校見学や面談でとことん先生と現状とその打破の仕方について話し合うこと。一人ひとりを大切にしてくれる学校かどうか、よく見てくることを伝えたい。
- 資料が非常にたくさんあり、見れば見るほど、どう選んでよいのかわからなくなるので、絶対に外せないポイントを先に決めておくことが大切だと思った。
- お子さんとよく話し合い、将来の自分がどんな姿でありたいかを親子で考えながら決めるのがよいと思う。理想と現実の間を取るのも重要だと思う。
- ネットや情報誌を参考にしながらも、やはり学校に足を運び、先生と話をするのが一番。親の求めていること、子どもの求めていることを整理し、そのなかでも子どもの求めていることを一番に伝えていけばよいと思う。先生や学校が不登校の子どもをどのように見ているか、うわべの言葉ではなく、誠意を感じる学校を選んでほしい。
- どんなに大きな高校でも、上から目線の先生がいるところはダメ。自分から言葉にできない子どもたちを温かく見守ってくれて、いつでも話を聞いてくれるような雰囲気が望ましい。
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- 全日制の学校では毎日朝から登校するのが当たり前で、わが子が通えなくなって留年までカウントダウンのような状態になったときは、「この子だけなぜ?」と思ってしまった。ところが通信制では、誰もが毎日来られるわけではなく、この子だけじゃないんだと思える。今日もまた行けないと毎日悩まなくてよいだけで親子でストレスフリーになり、このゆったりした時間が必要だったと思える。
- 当たり前を一度捨てて、親も子もそれぞれの幸せについて考えてみてほしい。
- ある全日制私立高校で本人を前に「不登校のお子さんなら、そのような方が通う通信制やチャレンジ校があるでしょう」と言われた。でも、別の全日制私立高校では「今日、会えたのも縁。これから受験するかを決めるのも自分、受験して合格しても、入学手続きをするか否かを決めるのも自分。本当にご縁があり、4月の入学式で再会できれば嬉しい。たかが高校受験ではなく、自分の人生の選択のひとつなので、たくさん迷って、悩んで決めてほしい」と話してくれた先生もいた。
不登校生=通信制高校生・チャレンジ校生ではない。もしお子さんが学校見学が可能なら、肌で学校の雰囲気を感じ、先生と話をして、本人が受け入れられる学校、受け入れてくれる先生がいる学校を選んでほしい。
わが子は学校選びの過程で、傷ついている心をさらに傷つけられた時期もあり、親子で不登校というレッテルで見られる現実がある厳しさを知った。辛かった。でも、本人が嫌な思いを消去しながら、「◯◯高校」に行きたいと宣言した。そのかいがあり、今は学校が楽しいと通っている。子ども自身が結論を出すまでは、とても長い時間ではあるが、楽しい高校生活が待っていると信じ、本人の意志で結論を出せるように、たくさんの選択肢をつくってあげてほしい。
解説:荒井裕司
不登校のお子さんの進路選択で試行錯誤した“先輩”から、同じ課題に直面する“後輩”に向けた「高校選びのアドバイス」は上記で紹介したとおりですが、多くのアドバイスから見逃せないポイントを集約し、2項目にまとめてみました。
①親御さんのスタンス編
高校でその子なりのやりがいや楽しみを味わえるように、親よりもまず本人が「行きたい」と思える学校を本人の意志を尊重して選んだほうがよい。そのためには、できれば本人と一緒に学校見学や説明会、学園祭などに実際に足を運び、雰囲気を肌で感じることが大切。親が先回りしすぎず、本人にとって過ごしやすい環境を選ぶことがいちばん大事。焦らないこと、なるようになるとドンと構えるくらいでないと親がつぶれてしまう。ともに成長するつもりで気長に頑張ってほしい。
②どんな学校を選ぶか編
親の求めていること、子どもの求めていることを整理し、絶対に外せない選択のポイントを先に決めておくこと。不登校の子どもが学校に通うわけだから、休んだときに学校がどんな対応をしてくれるかが大事。一人ひとりを大切にしてくれる学校かどうか、先生や学校が不登校の子どもをどのように見ているか、うわべの言葉ではなく、誠意を感じる学校を選んでほしい。
たとえ綿密な選択条件を検討して入学した学校でも、入学してみないとわからない問題は出てくるでしょう。ただ、全日制高校とは違って、通学型の通信制高校は教師の対応、カリキュラムや教育システムを含む教育環境を子どもたちの状況に合わせて柔軟に変更できる学校だと思います。問題が見つかったら遠慮なく改善を求めて学校や担任と話し合うことが、学校側にとっても一人でも多くの子どもたちが過ごしやすい居場所にするための貴重な声になるはずです。また、通信制高校に入学した際は、せっかく出席・欠席を気にせずに済む学校を選んだのですから、「行く」「行かない」で一喜一憂せず、じっくり3年間かけて元気を取り戻すようなスタンスでもいいかもしれません。