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Q&A 不登校なんでも相談室
2021年11月28日に開催された登進研バックアップセミナー111 in 仙台の第2部の内容をまとめた抄録です。
講師 若島 孔文(東北大学大学院教育学研究科教授)
齊藤真沙美(東京女子体育大学・東京女子体育短期大学講師)
市川 諭 (臨床心理士、公認心理師)
荒井 裕司(登進研代表)
※講師の肩書きはセミナー開催時のものです。
Q1 意欲がなく、将来への希望がもてない中1男子
中1の息子は、何事にも意欲が感じられず、やりたいことや将来への希望をもっていない状態で、今後どう接したらいいか悩んでいる。学力低下も心配。
A1 本当に意欲がないのかを見直してみる(講師:市川諭)
第1部の講演で若島孔文先生が言われた、「光あるところに光を当てる」という言葉が心に響きました。光は、お子さんだけでなく、お子さんのことで悩んでいる親御さんのほうにもあるのではないかと思います。たとえば、このご質問者のいいところ、光あるところは、お子さんのことをよく見ているところ、そして、思春期は本当に難しい時期だと思いますが、そうした状況のなかでもお子さんへの接し方について工夫しようとしている、そこが素晴らしいなと感じました。
まず、ご質問の「意欲」の問題については、この中1の息子さんもそうだと思いますが、思春期というのは、大人の言うことに矛盾を感じたり、自分の考えをしっかり確立していく時期です。そのような時期の対応としてちょっと気になるのは、ご質問の内容が親御さんが感じていることなのか、ご本人がそう言ったのか、よくわからない感じがあることです。
もしご質問者がまだちょっと「子離れ」ができていない部分があるとしたら、まずは、「親御さんと息子さんの思っていること、考えていることは違っていいんだよ」ということを明確に伝えることが重要になってきます。
「Iメッセージ」で伝える
これについては、「I(アイ)メッセージ」を使って伝えるとよいのではないかと思います。「Iメッセージ」とは、相手に話しかけるときに、「あなたは…」ではなく、「私は…」というように、「I=私」を主語にしてメッセージを伝える方法のことです。
たとえば、このご質問について「Iメッセージ」で伝えるとすると、「私は、あなたを見ていて何事にも意欲がないように感じるのだけど、あなたはどう思う?」というセリフになります。こうすると、「私の思っていることと、あなたの思っていることは別でいいんだよ」というメッセージになりますし、もうひとつ、「あなたの考えを尊重するよ」という、2つのメッセージが暗に伝わりますので、このような声かけをしてみるとよいのではないでしょうか。
また、お子さんの意欲を高める土台になるものとして、「小さな変化」に気づいてあげることが重要になります。
ただし、その「小さな変化」は、親御さんが望むような学習面や学校に関係のある変化ではなく、それとは真逆のこと、つまり、アニメやYouTubeへの興味・関心などから始まることがほとんどです。
ですから、ご質問には「何事にも意欲が感じられない」とありますが、あらためて、お子さんに尋ねてみて、「今、このゲームが面白いんだよ」という話が聞けたら、お子さんが興味をもっている活動を認めてあげる。それが意欲を高める土台の一歩になるのではないかと思います。
学力低下をどうサポートするか
ご質問の最後に「学力低下も心配」とありますが、これについては「参考資料」の中に「気になる勉強の遅れ」という資料があります。ここに不登校を経験した若者の「好きなことが見つかれば、勉強の遅れなんていくらでも取り戻せる」という力強いメッセージがあります。これについては、私もまったく同感で、長年、不登校のお子さんをもつ保護者の方々から相談を受けていて実感していることです。
ただし、2つチェックポイントがあって、ひとつは、小学校4年生あたりで学習につまずきがあったかどうか。ここでつまずきがあった場合、その後の小5以降はかなり抽象的な学習になっていきますので、学習に困難を感じて不登校になったり、意欲が大幅に低下する大きな要因になっている可能性もあります。このようなケースでは、その子の進度に合った学習を個別に見てもらえるような学習環境を用意してあげることが大切です。
もうひとつは、小学校時代に習い事や学習以外の課外活動について、一定期間やりぬいた経験があるかどうか。このような経験をちゃんともっている子は、たとえば、やりたいことが見つかる、あるいは、中3で受験勉強をせざるを得ないときに頑張りがきく。そういうケースを多く見てきました。
一方、こういう経験のない子には、むやみに勉強させようとするよりも、まず、やりたいことや長く楽しんでできるような学習以外のことを一緒に探してあげる、見守ってあげる。とにかく勉強させなければと考えるのではなく、まず、そういう経験を与えることが大事なんだな、という見方でお子さんに関わっていただければと思います。
Q2 きょうだいで不登校になったときの対応
姉(中2)と弟(小4)の2人が不登校です。姉は小5から行きしぶりがあり、中学入学後すぐに行けなくなって現在に至ります。小4の弟は、姉の行きしぶりに伴ってちょこちょこ休みはじめ、小2から完全に行かなくなりました。姉のときは当初かなり厳しく登校させようとしましたが、弟のときはすぐに行けないことを認めたせいか、姉は弟にきつく当たることが多いです。2人にどう対応したらいいか途方に暮れています。
A2 お姉ちゃんの気持ちを受けとめることから(講師:齊藤真沙美)
不登校のご相談を受けていると、きょうだいで不登校というケースは意外と少なくありません。とはいえ、親御さんとしては、1人が不登校になって、さらにきょうだいも…となると、あちゃー、またかと思うわけです。
そうなると、家庭の要因とか自分たちの関わりがいけないんじゃないかと、自分を責めたりする場合も出てきます。不登校にはいろいろな要因が関わっていますので、まったく関係がないとはいえないかもしれませんが、いずれの不登校も原因ははっきりしないことが多いですし、原因を取り除いても不登校は改善されないことがとても多いんです。
ですから、たとえきょうだいで不登校になったとしても、家庭の原因を見つけ出そうとするよりも、どんな関わりをすれば、子どもたちが過ごしやすくなるかを考えていくことが大切です。
そして、きょうだいといえども別人格ですから、どんなことが辛いのか、どうしたら過ごしやすくなるかは、それぞれ異なります。ですから、個々に、それぞれに合った対応を見つけていけるといいのかなと思います。
お姉ちゃんの複雑な心情
ご質問のお姉ちゃんの反応は、2人とも不登校でなくても、きょうだいのうち1人が不登校になった場合、学校に行っている子のほうに出てくる反応です。要するに、「私だって辛いことがあるけど頑張って学校に行っているのに、なんで〇〇は行かなくていいの?!」というわけです。ですから、きょうだいがいるご家庭には共通するテーマともいえるのではないかと思います。
ご質問のケースでは、先にお姉ちゃんが休みはじめたときは登校を強いるような厳しい対応をされていて、本人はしんどい思いをしたのでしょう。なのに、弟くんのときはすぐに「行かなくていいよ」という対応になったので、お姉ちゃんにしてみれば、「自分のときはそうじゃなかったのに…」と、怒りや嫉妬など複雑な思いが生じているのだろうと思います。
一方で、「学校に行くのが辛い」という気持ちも、このお姉ちゃんはわかっているわけです。自分も体験しているわけですから。このように、お姉ちゃんはかなり複雑な心情のなかにいることが想像できます。
こういうとき、親御さんとしては、つい説得したくなってしまうのではないでしょうか。「弟だってこんな状況なんだから、そこをわかってあげてよ」みたいな。そう言いたくなる気持ちはよくわかりますが、お姉ちゃんだって、そんなことは十分わかっているはずですから、そこをわざわざ説得、説明するよりも、いま、お姉ちゃんはどんな気持ちでいるのか、それをちゃんと聞いてあげて、その気持ちを親御さんが言語化して伝え返してしてあげることが必要かなと思います。
たとえば、「自分のときは学校に行けときつく言われて辛かったのに、弟はずるいなって思ってるんだよね」とか、「なんで弟ばっかり…って、イライラする気持ちがあるんだよね」といった感じです。そうやって、お姉ちゃんが自分の気持ちを表現できて、それを親御さんにわかってもらえたときに、自分の気持ちの落としどころが見つかる、気持ちにちょっと余裕が生まれる、そんな気がします。ですから、まず、お姉ちゃんの気持ちを共有してあげることが必要になってきます。
また、お姉ちゃんが休みはじめた頃を振り返って、「確かにちょっときつくやりすぎちゃったな」と思うところがあれば、「あのときは、お母さんもよくわからなくて、あんな対応になってしまったけど、あれはしんどかったよね」といったことを伝えてもいいと思います。それが伝わることによって、お姉ちゃんも自分の気持ちを受けとめてもらえたということで、余裕をもって弟くんを見ることができるようになるかもしれません。
さらに、親御さんは、日々の2人への対応でご苦労されることも多いかと思います。先ほど、きょうだいとはいえ別人格なので、対応も個々にとお伝えしましたが、ふだん家庭のなかで生活するうえでのきまりとかルールは、同じようにやっていただいてかまいません。「朝、だいたいこの時間に声をかける」とか「夕飯の時間になったら呼ぶ」といったことは同じようにやっていただいて、その結果、それですぐ動けるのか、なかなか動けないのか、嫌がるのかというあたりは個々で違うと思うので、そこは個々に合わせて対応していく、ということになるでしょう。ですから、ご家庭でのきまり、ルールなどの大枠のところは、きちっと決めて続けていただければいいのかなと思います。
2番目に不登校になった子のほうが取り組みやすい
きょうだいで不登校になったケースに関わっていると、最初に不登校になったお子さんのほうが時間がかかることが多いように思います。休めるようになるまでに時間がかかっていますし、そこまでのあいだに悪循環が起きたりもするからだと思いますが、2番目に不登校になったお子さんのほうが比較的取り組みやすい場合が多い気がします。
もちろんケースバイケースですが、取り組みやすいほうからやっていくのが基本になりますので、そのあたりも頭に置いて接していただけるといいのではないでしょうか。そして、ぜひ親御さんには、相談できる場所、一緒にお子さんにどう対応していけばいいかを考えてくれる場所をもっていただきたいと思います。
ご質問のケースは、小学生と中学生ですが、もし公立で学区が同じであれば、校内はもちろん、小中学校の先生方にも連携をとっていただいて、共有したほうがいい情報は共有していくということがスムーズにできると、親御さんもやりやすいと思います。そのへんも学校側と相談されたらいいのかなと思います。
Q3 どんな進路先があるのか高校の情報を知りたい
現在中2で、来年は中3になるので、進路のことが心配。通信制を含めて、どんな高校の選択肢があるのか知りたい。
A3 子どもたちが傷つかない高校選びのポイント(講師:荒井裕司)
不登校の子どもたちの進路については、以下のように「入学後、通えそうな場合」と「入学後、通えそうもない場合」の2つに分けて考えるとよいでしょう。
1. 入学後、通えそうな場合
まず、「入学後、通えそうな場合」ですが、これは、その子の中にエネルギーがたまって元気になってきて、普通の全日制でも通えるかな? というような感じになっている場合です。この場合は、通常の学校選びと同様、その子の学力に合わせて、全日制も含めた各学校の説明会やオープンスクールなどに参加して、本人の納得する学校を選ぶとよいでしょう。
ただし、宮城県の入学者選抜は、当日の学力検査(入学試験)の結果と内申点で合否が決まります。両者の割合は、進学校のほうが比較的内申点の割合が低く、入学試験結果をより重視する傾向にあります。もちろん学校によって5:5とか、その割合はさまざまですが、いずれにせよ内申点は入学選抜の合否を決定する大きな要素になります。それを考えると、不登校の子どもたちの内申点はほとんどゼロに等しい状況にありますので、実力に相応する学校よりちょっと低めの学校を選ばざるを得ません。
その一方で、内申点を問わない、あるいは不登校の子どもたちを積極的に受け入れようという定時制や通信制の高校もありますので、こちらも視野に入れて考えてみてください。ただし、定時制の高校は、入り口(入試)のハードルは低めですが、出口(進級や卒業)については全日制と同様ですから、出席日数が不足すれば進級や卒業ができません。
不登校を経験した子どもたちは、高校に入ってから再び不登校になってしまうことも少なくありません。そんなときは、あわてて退学してしまわないことが重要です。「途中転入」という方法で通信制の高校へ転入することができるからです。最初からそうしたことも想定に入れておき、傷つく心の負担を少なくすることが大事です。
2. 入学後、通えそうもない場合
一方、「入学後、通えそうもない場合」は、「入れる高校」よりも「通いやすい高校」を選ぶことが大切です。不登校を経験した子どもたちは、「また不登校になりはしないか」「そうなったらどうしよう」と不安を感じていることが多いのですが、その点、たとえば通信制高校なら出席が前提になっていませんから、自分の体調やペースに合わせて登校のリズムを自分で組み立てることができます。
なかには、「通信制なんていやだ。普通の全日制の高校に行きたい」というお子さんもいるかもしれません。しかし最近、「通学型の通信制」が出てきたり、その自由な学びのスタイルが注目を浴び、人気も認知度も高まっています。通信制から、大学や専門学校に進むことも十分に可能です。
長年、不登校の子どもたちと関わってきて、大事だなと感じることは、子どもたちが自分のペースで通えて、自分の気持ちに合った学校に入学し、そのなかで学ぶ楽しさを知り、メンタルを整えて、自分の夢ややりたいことを実現するための道を探る、そんな3年間を過ごすことではないでしょうか。
3. 子どもたちが傷つかない高校選びのポイント
以下に、不登校の子どもたちが失った自信や意欲を取り戻し、楽しい学校生活を送るための「高校選びのポイント」についてあげてみました。
高校選びのポイント
①学習について、不登校によって抜け落ちた部分を補うための支援や、それぞれの進度やペースに合わせた支援が行われているか。
不登校の子どもたちは、学習面で自信を失っていたり、不安を抱えていることが多いため、進路選択にあたっては、そうした学習面へのフォローがなされているかどうか、小中学校で抜け落ちた部分があれば、そこまでさかのぼって学び直しの支援をしてくれるかどうかが重要なポイントになります。
②一人ひとりのやりたいことや興味・関心に合わせて、きめ細かな学習指導や進路指導が行われているか。
③入学後、通えなくなった生徒に対するフォロー体制があるか。
家庭訪問、カウンセリング、医療機関との連携など
④生徒の気持ちを共感的に受けとめ、ねばり強くそのかかわりを維持していくようなマインドをもった教師たちがいるか。
⑤さまざまな学校行事や体験授業などがあり、生徒たちが共に楽しみながら充実した学校生活を送れるか。
4. 高校選びに関するアンケート調査結果より
ここで「参考資料」をご覧ください。これは当研究会が独自に調査した「高校選びに関するアンケート調査」の結果をまとめたもので、東京都内の通信制高校在籍者の保護者100人に質問紙によるアンケート調査を行いました。
まず、上の「なぜ通信制高校を選んだのか、その理由は?」のグラフをご覧ください。回答の1位は「自分のペースで通えたり勉強ができるから」で、56%と過半数を占めています。これは、私が先ほど「『入れる高校』よりも『通いやすい高校』を選ぶことが大切」と申し上げたこととぴったり重なります。2位の「同じ経験(不登校)をした生徒が多いから」は、自分の気持ちをわかってくれる仲間がいて安心できる、不登校だったことで引け目を感じなくてもいい、といった心情からでしょう。
その下の「高校の情報はどのように集めましたか?」の回答を見ると、2位が「インターネット」で70%を超えています。IT化が進み、スマホやパソコンを使って、いつでもどこでもさまざまな情報が得られることから、かつて多かった3位「学校案内を取り寄せる」33%をはるかに上回っています。
しかし、1位はやはり「学校見学・学校説明会」なんですね。それはネットだけでは得られない情報があるからでしょう。たとえば、学校や先生、生徒たちの雰囲気など、自分の目で見て、肌で感じて、はじめてわかることがあるわけです。学校見学に出かけると、通学時間や乗り換えの便不便、電車の混み具合なども実感できます。
通学については、下の「学校を選ぶ際のチェックポイントや決め手は?」のグラフにも興味深い回答があります。5位に「自宅から近い(通いやすい)」がある一方で、「自宅から遠い(地元の学校は避けたい)」が11位に入っていることです。自宅から遠くて、乗り換えも多く、時間がかかるのに、それでもこの学校に決めた。そこには、不登校だった自分を知っている生徒がたくさんいる地元の学校には行きたくない、知らない生徒ばかりの学校に行きたい、そこで「新しい自分」になって、「新しい高校生活」をしたいんだ、という思いがあるわけです。
アンケートの最後に、通信制高校の保護者の方々に「現在、不登校のお子さんがいる親御さんに、高校選びについしてアドバイスするとしたら、どんなことを伝えたいですか?」と聞いてみました。
不登校のお子さんの進路選択で試行錯誤した“先輩”から、同じ課題に直面する“後輩”に向けてたくさんのアドバイスが寄せられました。そのなかから見逃せないポイントを集約し、以下の2項目にまとめてみました。
①親御さんのスタンス編
高校でその子なりのやりがいや楽しみを味わえるように、親よりもまず本人が「行きたい」 と思える学校を本人の意志を尊重して選んだほうがよい。そのためには、できれば本人と一緒に学校見学や説明会、学園祭などに実際に足を運び、雰囲気を肌で感じることが大切。
親が先回りせず、本人にとって過ごしやすい環境を選ぶことがいちばん大事。そして、焦らないこと、なるようになるとドンと構えるくらいでないと、親がつぶれてしまう。ともに成長するつもりで気長に頑張ってほしい。
②どんな学校を選ぶか編
親の求めていること、子どもの求めていることを整理し、絶対に外せない選択のポイントを先に決めておくこと。
不登校の子どもが学校に通うわけだから、休んだときに学校がどんな対応をしてくれるかが大事。一人ひとりを大切にしてくれる学校かどうか、先生や学校が不登校の子どもをどのように見ているか、うわべの言葉ではなく、誠意を感じる学校を選んでほしい。
たとえ選択条件を綿密に検討して入学した学校でも、入学してみないとわからないという問題は当然出てくるでしょう。しかし、全日制高校とは違って、通学型の通信制高校は、教師の対応、カリキュラムや教育システムを含む教育環境を子どもたちの状況に合わせて柔軟に変更できる学校です。問題が見つかったら遠慮なく改善を求めて学校や担任と話し合うことが、学校側にとっても一人でも多くの子どもたちが過ごしやすい居場所にするための貴重な声になるはずです。
また、通信制高校に入学した場合は、せっかく出席・欠席を気にせずに済む学校を選んだのですから、「行く」「行かない」で一喜一憂せず、じっくり3年間かけて元気を取り戻すようなスタンスでもいいかもしれません。
Q4 発達障害の傾向がみられる小3女子
小3の娘について、昨年8月、自閉スペクトラム症(アスペルガー)に一歩足をつっこんでいる感じ、と病院の先生から話がありました。朝、登校するために家は出ますが、途中で戻ってきて、「学校無理」「気持ちを整えて、途中から行く」と言います。公園で思いっきり遊ぶと気持ちが切り替わる日もありますが、休むことが多く、家での過ごし方に困っています。好きなことだけしていますし、自転車で家を勝手に飛び出して戻らず、警察に保護されたこともあります。
A4 好きなところから可能性を広げていく(講師:齊藤真沙美)
発達障害、自閉スペクトラム症については、ざっくり言うと、全体的な知的能力に遅れはないけれども、対人コミュニケーションや状況理解の難しさ、こだわりの強さ、感覚過敏などをもっているために集団生活や学校生活にやりづらさを感じることが多いという特徴があります。
ただし、自閉スペクトラム症だから不登校になるかというと、必ずしもそうではなくて、もちろんやりづらさのひとつの要因ではありますが、どのような特徴をもっていても登校できているお子さんはたくさんいます。したがって、ベースにこういう特徴をもっていて、そのために学校に行けなくなったという状態は、いわゆる「二次症状」「二次障害」といわれるものであり、その子の特徴に応じた配慮がなされれば、学校に通うことも十分に考えられます。
そして、ご質問のケースでは、周囲がそうした本人の特徴に合わせてあげても、学校に通うことが難しい状況だと考えられます。「一歩足をつっこんでいる」とありますので、グレーゾーンということだろうと思います。とはいえ、人は誰でも多かれ少なかれ発達障害的な特徴をもっていますから、それがどの程度で、どれくらい困っているのか、というところが問題になってきます。
自転車はこの子なりの「対処方法」
第1部の若島孔文先生のマネをして、このケースで「いいところ探し」をしてみると、まず、この子は自分のことをとてもよくわかっています。「学校無理」「気持ちを整えて、途中から行く」だなんて、小学3年生でなかなか言えません。自分の状態をしっかり理解していて、それを的確に言葉で伝えることができる。本当に素晴らしい力をもっているなと感じます。
また、保護者の方も、この子がそういうことを言えるような環境を整え、この子の気持ちもちゃんと汲みとっている。「思いっきり遊ぶと気持ちが切り替わる」ということも、きちんと理解しておられます。このあたりは「対処方法」ですから、「こうすると学校に行きやすい」「こうすると気持ちがスッキリする」といった情報は、お子さんと共有していただけるといいと思います。
そして、自転車のことですが、勝手に飛び出して警察に保護されてしまうと、「ちょっと問題だ」となりがちですが、私の経験から言うと、発達障害傾向のお子さんには自転車が好きな子が多いんです。ある小学校中学年の男の子は、4キロ離れたお店まで自転車を飛ばしてケバブを買いに行ったり、先日も小1の男の子が放課後に学童保育に行くはずが、「今日は探検するから」と帰ってしまい、近所を自転車で走り回っているところを先生に発見されたということがありました。
疾走感や風を切って走っている感じがすごく好きだという子もいますし、何かを切り替えたり気分転換をするときに自転車を使っているのかな、とも思います。つまり、その子なりの「対処方法」ですよね。だとしたら、その子の生活のなかにうまく組み込んでいけるといいのではないでしょうか。運動でストレスを発散し、気持ちを切り替えることによって学習に向かいやすくなったり、気持ちを立て直して取り組みやすくなる発達障害傾向のお子さんはけっこういます。
たとえば、不登校傾向のある小1の女の子は、どこかで発散しないと夜も目が爛々としてなかなか眠れないタイプでしたが、毎日、近所の神社へ行ってひとっ走りするようになってから、スッキリしてよく眠れるようになりました。また、小3の男の子が学校から学童保育に行ってもしばらくは落ち着かないということで、校庭を走って一周してから学童に行くようにしたら、落ち着いてレゴとかで遊ぶようになりました。
その子に合わせたスケジュールを作る
このように自転車もこの子が落ち着くための方法のひとつだと思いますので、勝手に出ていくと問題になってしまうようなら、それを「対処行動」として取り込めるといいのかなと思います。
具体的には、このお子さんに合わせてカスタマイズしたスケジュール表のようなものを作ると、見通しがもてて取り組みやすいでしょう。たとえば、好きな授業だと行きやすいのであれば、月曜日はその授業に出るために朝ちょっと公園で遊んでから学校に行って、給食を食べたら帰ってきて、その後は決められたコースを自転車で走るとか…。
自転車で走るにしても、何か目的をつくることをおすすめします。コース中のどこかで写メを撮ってくるとか、途中のお家にお気に入りの犬がいたら、よく様子を観察して、帰ってからお母さんに報告するとか。そして、それができたらスケジュール表にシールを貼ったり…。こんなふうに目的をもって、スケジュールに則って生活できるようになったら、この子も過ごしやすくなる部分があるのではないでしょうか。
このあたりのことは、場合によっては、学校と連携をとれるといいと思います。私が小学校でスクールカウンセラーをやっていたとき、登校しぶりがあって来たり来なかったりというお子さんと一緒に一週間の時間割を作って、○曜日のこの時間は保健室で〇〇の勉強をするとか、図工がすごく好きな子だったので、図工については図工の先生の空き時間に個別にみてもらうというようなスケジュールを立てたりしました。
この子の好きなところから広げていくということでかまいませんので、本人が過ごしやすい過ごし方を一緒に考えていければいいですね。好きなことをやっていると、たとえばゲームに勝つために計算ができたほうがいいとわかったら、さっそく算数の勉強を始めたりしますし、勉強が何かをやりたいための手段になってくると、思いのほか効率よく習得できたりします。そういうところから広げていったらよいのではないでしょうか。
さらに、この子の居場所として、通常の学級以外にも、通級指導学級、習い事など、この子が楽しく過ごせるいろいろな居場所があることも選択肢として考えていただければと思います。
Q5 子どもへの寄り添い方、距離のとり方を知りたい
現在12歳の娘(不登校の初期)について、子どもを見守ることや、気持ちに寄り添うことが、本当に難しいなと感じています。寄り添い方を間違えて、うっとおしがられることもしばしば…。子どもとの距離のとり方や、子どもに響く、届くような寄り添い方を知りたいです。
A5 言葉だけで寄り添おうとしてもうまくいかない(講師:市川諭)
このご質問を読んだとき、本当に素晴らしいなと思いました。まず、「不登校の初期」とありますが、この時期、親御さんはイライラしたり焦ったりして、つい子どもに強い物言いをしてしまったり、どう接していいかわからなくて見離すような対応になってしまうことが非常に多いんです。
ところが、このご質問者は、不登校の初期のこの段階で、見守る姿勢、寄り添う姿勢が大事だということを理解し、すでにそういうスタンスになっている。とても柔軟性のある方だなと感じます。
また、子どもとの距離のとり方というのは、すごく繊細で難しいところなんですが、このあたりについてもなんとかしたい、知りたいという、そういう細やかなセンスも素晴らしいと思いました。ですので、このような方のご質問を受けて、私も細やかな、そして少々突っ込んだお話ができればいいなと思っています。
言葉ではなく、行動で寄り添う
まず、お子さんと寄り添うときの前提として、「距離のとり方」というものは、そのときの親子の関係性やお子さんの状態によって変化していくものだと思います。その大前提があってのことですが、ひとつは、言葉だけで寄り添おうとしてもうまくいかない、お互いの思いがズレてしまうことが多いなという印象があります。
たとえば、ご質問の例でいうと、「寄り添い方を間違えて、うっとおしがられることもしばしば」とありますが、この「うっとおしい」の意味のとり方は人それぞれで変わってきます。辞書を見ると、「うっとおしい」の意味は、ひとつは「邪魔になってうるさく感じる」、もうひとつは「重苦しい気持ちになる」とあります。
ですから、お子さんが「うっとおしい」と言ったときに、邪魔になってうるさく感じるのかなと思って距離をとってみたら、実は重苦しく感じていて、ただ何も言わずそばにいてほしかったのかもしれません。このように、言葉だけで寄り添おうとするとズレた対応になりがちで、かえって反感を買ったり、関係が悪くなってしまうことが多いように思います。
では、どうすればよいかというと、お子さんとの心理的な距離が比較的近い状況であれば、一緒に散歩をして歩幅を合わせてあげるといったこともできるかなと思います。このお子さんは12歳の女の子なので、一緒にお菓子をつくる、料理をする、あるいは何か力を合わせてひとつのことをするというように、言葉ではなく、行動で寄り添うようなことをしていけると、無難な対応になるのではないでしょうか。
「さすが〇〇」「やっぱり〇〇」とほめる
一方、お子さんとの距離が遠い、近づけない、話しかけることも近くにいることも難しいという状態のときもあるでしょう。そんなときは、どうしても言葉で寄り添わざるを得ないわけですが、たとえば、「さすが、あなたって細かい作業が上手だよね」とか「やっぱりあなたって優しいんだよね」というように、ちょっと副詞をつけたセリフでほめてみたらどうでしょう。
この「さすが〇〇」「やっぱり〇〇」という言葉は、長い期間、お子さんを肯定的に見ていないと出てきません。それはお子さんにもわかるはずです。近い距離で接することができないときも、そのひと言で「あなたのことを肯定的に見ていたよ」というメッセージが伝わりますので、言葉だけでも寄り添っている雰囲気はつくれると思います。
私が関わっている子どもたちから聞くのは、この逆で、ずーっと否定的に見られてきて、最後のとどめの言葉が刺さったという話です。たとえば、「ごはんを食べたあと、食器くらい洗ってよ」「あんたさあ、こんな簡単な問題さえできないの」。この「〇〇くらい」「〇〇さえ」という言葉をもらって、すごく傷ついた、反感を抱いたという話をよく聞きます。
もちろん親御さんがこう言いたくなる気持ちはわかりますが、「さすが〇〇」「やっぱり〇〇」とほめられるところがあるかなと意識して探しながら、声をかけていくことが、ちょっと遠めの寄り添い方になるのではないかと思っています。
Q6 「自分が何をやりたいのかわからない」と言う中3女子
現在中3の娘は、高校には行くが、「自分が何をやりたいのか、できるのかがわからない」「わからないから困っているんだ」と話します。自己肯定感も低いです。「みんなはやりたいことがある」と落ち込んだりもします。どう対応すべきか悩んでいます。
A6 あわてず、その子の花が開くのを待ってあげる(講師:荒井裕司)
中3ですから、明確な方向性とかやりたいことがわかっていればそれに越したことはありませんが、ほとんどの場合、なかなかそうはいかないものです。この娘さんは「みんなはやりたいことがある」と言っていますが、それも実際のところどうかわかりません。大学生だって、卒業後に何をしたいのかわからない人がたくさんいるわけですから。
あるいは、この子の「自分のやりたいことがわからない」というのは、親が望んでいる、期待しているようなかたちでは、やりたいことが見つからない、ということかもしれません。だから、「いま、私はお父さんお母さんの期待には応えられないんだよ」ということを、言葉を代えて言っているのかもしれません。あるいは、15歳で経験も少なく、ビビっ!とくるものにまだ出会えていないのかもしれません。
マインドマップから見えてくるもの
みなさんのお手元に「マインドマップ」(下図参照)が配られていると思いますが、これをちょっとご覧ください。
これは、トニー・ブザンというイギリスの教育コンサルタントが考案した、自分の考えを絵で整理する表現方法で、頭の中に雑多に詰め込まれた情報や、明確には意識されていない思いなどを整理するのに非常に有効だといわれています。
この手法を使って、不登校の子どもたちが描いたのがここに掲げた4つの絵です。こんなふうに絵で表現することで情報がわかりやすく整理されるだけでなく、好き嫌いや得意・不得意を色分けすることで、「ああ、私ってこうだったんだ」というものがなんとなく見えてきます。その結果、自分の進路につながる道が見つかったという子もいました。
右上にあるのは、R・Hくんという男の子のマインドマップです。彼は、小6のときに少年野球の世界選手権に出場するほどの才能をもっていましたが、野球で酷使しすぎて体をこわし、不登校になりました。一時は希望を失い、まったく動き出せない状態でしたが、この絵を見ると、野球以外にも、音楽、マンガ、食べ物など好きなものがいろいろあって、健康な心をもっていることがわかります。
その後、ようやく挫折体験から立ち上がって動き出したとき、ずっと硬式野球をやってきたけれど、「軟式野球も楽しいじゃん!」と気づいたんです。高校では軟式野球部に所属し、3年間、部活も勉強も楽しみながら頑張って自分を取り戻していったケースです。
右下のM・Oさんという女の子は、かなり重い不登校状態でしたが、部活でダンス部と出合って、これだ!と思い、練習に打ち込むようになってから元気になっていきました。ご両親と宝塚観劇に行ったことをきっかけに宝塚が大好きになり、やがて自分もあの世界に入って活躍したいと夢見るようになったそうです。現在、その目標に向かって頑張っています。
左上のK・Yくんという男の子は、かつては深刻なひきこもり状態でした。成績優秀で進学校に進みましたが、大好きなバイオリンの勉強を親御さんに止められ、しだいにひきこもるようになりました。その後、バイオリンの勉強を認めてもらってようやく動きはじめ、大学入学後はオーケストラ部でバイオリンを担当。好きなことを続けることで元気を取り戻していったケースです。
左下のS・Eさんという女の子は、絵のいちばん下に「ゴディバ神」と書いてあるように甘いものが大好き。音楽にも興味があり、軽音部と出合って覚醒しました。とても優しく思いやりのある子で、自分でも右上に「おもいやり、マナー」と書いているほどです。高校卒業後は公務員試験を受けて、現在、市役所の職員として働いています。
こんなふうに子どもたちに、好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なことなどを絵に描いてもらうと面白いかもしれません。本人も自分の頭の中が整理できるし、親御さんも「ああ、この子はこんなことが好きなんだ」「こんなことに興味があるんだ」と新しい発見がきっとあると思います。
「どこで開花するか楽しみだね」
私は、よく子どもたちにこんなふうに言います。
「いま、あなたはひとりの人間としてここにいるけれど、あなたはひとりで生まれてきたわけじゃない。人類の歴史って500万年もあるんだよ。いちばん最初のアウストラロピテクス(猿人)の頃からずっと命はつながっていて、途中で切れそうになるけれど、またつながって、つながって…。おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そして、いまあなたがここにいるんだよ」と。
そのこと自体が奇跡といえますが、私が言いたいのは、「あなたのおじいちゃんもおばあちゃんも、その前のおじいちゃんもおばあちゃんも、みんないっぱい失敗したり、悩んだり、悔しい思いをしたり、転んでケガをしたりしただろう。でも、そういうことを乗り越えてきた知恵が、実はあなたのなかにDNAとして山のように蓄積されているから、それがいずれ開花するんだよ。もうじき花が開くから、あわてなくていいよ」ということです。それをずっと言いつづけてきました。
ですから、このご質問の女の子にも、「そんなにあわてなくていい。どこで開花するか楽しみじゃない。それをもう少し待とうよ」と伝えたいと思います。
Q7 「学校には行かない。家で働く」と言う中1男子
中1の息子は、昼夜逆転が落ち着いて、少しリモート授業を受けたり、担任の先生に会うのがスムーズになったり、少しずつ変化が見えてきています。ところが、進路のことを聞くと、「何もない。学校は行かない。家で働く」と言い、どう対応したらよいのか悩みます。このままずっと家にいてゲームをして、家事手伝いをするという意味なのかなと思ったりしますが、親としては進路について不安になります。
A7 「小さな変化」をお子さんと共有する(講師:齊藤真沙美)
今日、第1部の若島先生のご講演からずっといろいろなかたちでお話に出てくる「小さな変化」にからめて、このご質問にお答えしたいと思います。
まず、このご質問者は、中1の息子さんの「昼夜逆転が落ち着いて、少しリモート授業を受けたり、担任の先生に会うのがスムーズになったり」という小さな変化をきちっと読みとって、わが子が前に進んでいるという実感をもっていらっしゃいます。こういう変化をちゃんと見てくださっているのは、本当に素晴らしいことだなと感じました。
一方、お子さんのほうは、まだ自分を「学校に行く/行かない」という大きな目盛りのものさしで見ているところがあるのかなという気がします。だから、進路の話になると、「高校は行かない」(今も行けてないし…)みたいな反応になるのでしょう。でも、ご質問者が持っている小さな目盛りのものさし(小さな変化を読みとることができるものの見方)を、お子さんと共有できれば、お子さん自身も少しずつ前に進んでいけるのではないかと思います。
見えない変化が見えてくると、モチベーションが上がる
私ごとで恐縮ですが、コロナ禍で運動不足を感じていたところへ、ちょうど職場でトランポリン教室を開くという話があり、無料だというので4カ月間通ったんです。で、結果を言いますと、残念ながら体重は減りませんでした(爆笑)。
ところが、職場にかなり詳細なデータがわかる体組成計(体脂肪率や筋肉量、内臓脂肪など体の組成も計測できる体重計)があって、それで測ってみたら、体脂肪が減って筋肉量が増えていたんです。それが、私にとってはすごく大きなモチベーションになりました。ずーっと体重が減らないな、減らないなとばかり思っていたら、やる気が起きなかったでしょう。
その体験を経て、これはいろいろなことに当てはまるなと思い、いま、ここでお話ししているんですが、さまざまな角度から見ていくと変化していることがあって、それが見えてくることが、その先のモチベーションにつながる、ということがたくさんあります。
中1の息子さんに、そういうものさしを自分で考えて持てと言っても難しいでしょうから、保護者の方が見つけた小さな変化や前に進んでいる感覚、そういう見方ができる目盛りの細かいものさしのことを、お子さんにもぜひ教えてあげてほしいと思います。
そうして、お子さん自身も自分の小さな変化を感じられるような、いろいろな種類のものさしを持てるようになってくると、それを積み重ねていくうちに、おのずと進路というところに結びついていくのだろうと感じます。
誰でもみなクセというのがあって、ものを測るときもそのクセにとらわれがちです。自分のクセは自分ではなかなかわかりませんから、いろいろな人に意見や見方を聞くことによって、視野がもっと広がっていくのではないかと思います。ぜひ、ご家庭のなかでも、それぞれの見方、考え方、ものさしの確認をしたり、スクールカウンセラーなど専門家の視点なども参考にされるとよいでしょう。
ものの見方や考え方が変われば、進路の選択肢も広がる
そもそも中1の頃に、高校の具体的イメージをもてるかというと、まだまだ難しいですよね。中学校の延長線上に同じような感じで高校というものがあるんだろうな、くらいにしか思っていないので、「じゃあ、今も行ってないんだから、高校も行かないかな」というような考え方になるのも不思議ではありません。でも、細かい目盛りのものさしを持つ習慣ができてくると、進路についてもたくさんの選択肢やいろいろな考え方があることがわかってきて、逆に学校に行きやすくなるのではないでしょうか。
なお、現在、「高校には行かない」と言っていることに関しては、「行きたくない、行けないと思っているのね」「でも私は、あなたに合う学校があったら行けたらいいなと思ってるよ」という感じで対応すればよいでしょう。一方、いま一歩ずつ確実に前に進んでいる部分がありますので、それについて確認・共有しながら、先につなげていっていただけたらと思います。
高校選びのポイントについては、先ほど荒井先生からもお話がありましたが、ご本人がすぐに動けない状態であるなら、保護者の方が情報収集や学校見学に行くなどの準備をしておくと、この先、お子さんの状態に合わせて情報を提示するときに役に立つと思います。このあたりは、在籍校の先生方とも連携をとりながら進めていけたらいいのかなと思います。