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わが子へのメッセージ

 2007年12月2日に行われた「登進研バックアップセミナー61」では、第2部「1問2答―いま悩んでいること、わが子に伝えたいこと」のなかで、事前に募集した親御さんからの「わが子へのメッセージ」を発表し、参加者全員でその思いを共有するという初めての試みを実施しました。

 これらのメッセージには、ご両親のわが子に対する深い愛情、悩み、苦しみ、不安など、さまざまな思いがあふれていて、会場には思わず目頭を押さえるお母さんお父さんもたくさんおられました。  ここにそのメッセージを紹介します。また、それぞれのメッセージに対する講師からのコメントもあわせて掲載しました。 つらい、苦しい、もう疲れた……心が折れてしまいそうなとき、読んでみてください。悩んでいるのは自分ひとりではないと知ることは、きっとあなたの力になります。

大丈夫。自分を信じて、自信をもって

●ゆっくり自分の力を信じて前へ進んでネ。

●あせらず、ゆっくりでいいから、自分と合う学校に通学できたらベストだと思うので、それまでなんとか自分を見つめ、元気になってほしいと願っています。

●あなたは、あなたのままでいいんだよ!!

●もっと自分に自信をもって! 君の描いた絵は最高だよ。

●今が思うようにいかなくても、心を枯らさなければ、いつからだって、やりたいことができるんだよ!

その思いは必ず伝わる

霜村 麦(メンタルクリニックあんどうカウンセラー)

 私がもし親だったら、目の前に“悩みのタネ”の子どもがいて、こんなふうに温かい言葉をかけることができるだろうかと考えてしまいました。これらのメッセージには、わが子に対する親御さんの温かい気持ちがあふれています。

 ただ、現実には、わが子に向かってこういう温かい言葉をかけにくい、あるいは、お子さんがまったく聞く耳をもたないという場合もあるでしょう。でも、親御さんがこのような気持ちをもっていれば、それは言葉にしなくても、必ずお子さんに伝わります。そして、それによってお子さんの心のなかに安心感が育まれ、必ず関係性が変わっていきます。

 私自身がカウンセラーとして子どもたちとかかわるときも、ここに寄せられたような温かな気持ちをもてるといいなと思いながら、読ませていただきました。

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いつまでもあなたの味方です

●これからも信じてるよ!

●信じることは大切だと思っています。これからもずっと、あなたの力を信じます。

●いつまでもあなたの味方です。あなたの力を信じています。

●自分の夢を大切に、少しずつでも前に進んでいける日が来るのを信じて、待っています。

●あなたを信じています。家族みんな力を合わせ、幸せになりましょう。

●今はちょっと迷い道に入ってしまっていますが、ここでしばらくホッと休息し、少々遠回りしても元気になって動き出せることを信じて、待っていようと思います。きっと、これも無駄な時ではなかったと、将来、笑って話せるんじゃないかと……

信じて待つことのむずかしさ

池亀 良一(代々木カウンセリングセンター所長)

 最近、「信じて待つ」ということのむずかしさを、あらためて実感しています。 親というものは、子どもについ、期待をしてしまいます。「這えば立て、立てば歩め」というように、ちょっと変化や回復のきざしがみえてくると、その次、さらにその次と期待をかけ、それが裏切られるとガッカリしたり、イライラがつのって爆発してしまう……そういう悪循環のくりかえしになりがちです。しかし、この悪循環をなんとか改善していかないと、家のなかが険悪な雰囲気になり、親も子もまいってしまいます。

 そこで、まず、「あなたを信じて待つよう、できるだけ努力してみるね」と本人に伝えて、少しでも安心感をもってもらうこと。そして、もし怒りが爆発しそうになったときは、怒りという感情の前に起こるであろう「ガッカリ」とか「残念」という気持ちを、なんらかのかたちでお子さんにも伝えられるといいのではないかと思います。

 これは、わが子に「期待するな」という意味ではありません。ただし、同じ期待するにしても、「今日これができたから、明日はあれもできるだろう」「次はこれもできるはずだ」というように、親御さんがせっかちすぎると煮詰まってしまいます。 ですから、もう少し遠い将来をイメージして、草木の芽が、やがて来るであろう春の訪れを待つように、おおらかにゆったりと待つ。待つということが、そんなイメージでとらえられるといいなと思います。

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苦しんだぶん、輝けるあなたでありますように

●「学校には行くもの」「勉強はするもの」…それ以外、考えもつかなかった。親を驚かせ、心配させ、怒らせて、2年目。昔も今も、あなたにとって「いちばんよいことはなにか」という思いは同じだけれど、あまり先ばかり見るのでなく、足元を見て、ゆっくり考えていこうね、と言える親になれたかなと思っています。

●あなたが不登校になってから、あなたも私たちも苦しみましたね。でも、あなたを見つめつづけたら、以前よりあなたのことが本当にいとおしくなりました。さまざまな学びもありました。決して無駄な時間ではなかったですね。苦しんだぶん、将来、輝けるあなたでありますよう、一生応援していきますね。

●どうしちゃったのかなあ? 小学校のときは、あんなに元気で友だちも多くて毎日楽しく学校に行ってた君が、中学に入学したとたん不登校になるなんて思いもしなかったヨ。最初は二人してよく泣いたね。君といっしょにひきこもりにもなったけど、このままじゃいけないと思ったから、お母さんは君より先に卒業して働きに出ます。君を見捨てたわけじゃなく、君の力や秘められた才能を信じてるから。あせらず、ゆっくりやっていこうね!! 君のこと大好きだよ!ってこと忘れないでネ。

その子の一生を支える言葉

大木 みわ(植草学園短期大学教授)

 結婚生活ン十年、「夫から一度も愛してるっていわれたことがありません」という奥さんがいました。若い人は違うかもしれないけれど、私のような年代の夫婦ならよくあることです。そこで奥さんが発奮して、「一度でいいから愛してるって言って」と夫に迫っても、たいていの夫は「そんなこと言わなくてもわかってるじゃないか」と言うだけ。

 メッセージを読ませていただいて、夫婦だけでなく、親子のあいだにも同じようなことがあるんじゃないかと思いました。親御さんが、こんなふうに素直に子どもへの思いを言葉にすることなんて、不登校にでもならなかったら一生ないんじゃないか。親と子が一緒に大変なことを乗り越えて来なかったら、言えなかったことではないでしょうか。

 親は、子どものことをどんなに大切に思っていても、「そんなこと言わなくたってわかるはず」と思い込んでいる場合がたくさんあります。でも、実際には、その思いが子どもに伝わっていないこともたくさんあります。それでも親子とか家族というのは、なんとか回っていくものなんです。

 だから、こんなふうに親御さんが子どもにあてて真剣に書いた言葉は、とても貴重です。子どもは、今の時点では「見るのもイヤ」とか「うぜぇ」とか思うのかもしれないけれど、でも、これらの言葉は子どもの心のどこかにずっと残って、その子を一生支えていくような力になると思います。

 それから、3番目のメッセージにある「お母さんは君より先に卒業して働きに出ます」という言葉。これは子どものほうでも、すごく願っていることなんです。 子どもは、いま自分が不登校という状態のなかで立ち止まっているのは仕方がないけれど、自分のために家族まで立ち止まってくれるのは耐えられない、重すぎると感じています。だから、家族のなかで誰か一人でも外に向かって動きだしてくれると、どよ~んとした家庭内の空気が入れ替わるような感じがして、子どもも気がラクになるんです。

 私は、お母さんに「パートでも習い事でもなんでもいいから、1週間に1回はどこかに出かけて」とお願いしています。週1回、お母さんが子どものためではなく、自分のために生きる。毎週水曜日の午後2時間は、お母さんは家を空ける。そういう時間があると、そこで子どもは新しい生き方を始めます。ぜひ、やってみてください。

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いまは充電の時なのかな

●好きなこと、楽しいことは、充電をしているんだね。

●エネルギーを補給できたら、前向きに考えていってほしい。

●こわがらずに世間に出てみましょう。楽しいこともありますよ!

腹をくくることの大切さ

荒井 裕司(登進研代表)

 私は、この3つのメッセージは、お子さんに「言葉」で伝えなくてもいいのかなと思います。「あなたが充電していることを、お父さんお母さんは理解しているよ」「見守っているよ」と言葉で伝えるよりも、できれば、お子さんの「好きなこと」「楽しいこと」を一緒にやってみる。「こわがらずに世間に出てみましょう」とアドバイスするよりも、一緒に外に出かけてみる。それが一番のわが子へのメッセージになるのではないでしょうか。

 言葉では「学校に行かなくてもいいよ」「ゆっくり充電しようね」と言っていても、親の背中からは「(学校に)行け行けオーラ」が出ていたりします。それを子どもは敏感に察知します。そんな状態でこういうメッセージを出しても、子どもにしてみれば、「なに言ってんだ」という話です。ですから、「言葉」ではなく、「心」でつながることがすごく大事になってきます。

 あとは、親が「腹をくくる」こと。「この子がどうなっても、とことんつきあってやろう」と腹をすえることが、親自身にとっても、子どもの心の安定にとってもなによりも大切なことだと思います。

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ごめんね

●あなたの気持ちがわかってあげられなくてごめんね。

●ひさしぶりに話がしたいね!

わかろうと努力すること

池亀 良一(代々木カウンセリングセンター所長)

 子どもの気持ちをわかってやりたいと思いながら、なかなかわかってあげられない。また、どういうふうに言葉をかけたらいいのかわからない。これは、多くの親御さんが悩んでおられることです。そのとき大事なことは、たとえよく理解できなくても、「わかろうとすること」「わかってあげようと努力すること」です。それが、まず大事なことではないかと思います。

 もうひとつは、親御さんが「子どもの気持ちがわかった」と思えることが大事なのではなく、子どもが「お母さんお父さんは、私の気持ちをわかってくれた」と思えることが大切だということ。つまり、子どもが主体、子どもがどう感じているかということです。子どもが「ああ、わかってくれたんだ」と思えば、必ずなんらかのかたちで表情や態度に出ます。子どもがそう思えるようなやり方を、いろいろ試行錯誤してみてください。

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ありがとう

●いつも生協の商品を冷蔵庫に入れてくれてありがとう。

生きててくれるだけでいいという思い

大木 みわ(植草学園短期大学教授)

 これは、コメントの必要なし! 親御さんがこんなことを言えるようになったら、もう「○」です。きっと、このお母さんは、もっといっぱい書きたい言葉があったと思うんですが、それを全部省略して、「ありがとう」だけ。この言葉のなかには、わが子に対して「今日も生きててくれてありがとう」というようなギリギリの思いが感じられます。

 親が子どもを好きな理由というのは、「よく言うことをきく」「成績がいい」「スポーツが得意」「明るく元気」「真面目」「やさしい」……そういう、いいところがたくさんあればあるほど、「お母さんは、あなたが好きよ」ということになるんだと思います。でも、それらを全部捨てて、「生きててくれるだけでいい」「それだけでうれしい」「ありがとう」という思いだけで、その子とつながっている。ほんとうにいいメッセージだなあと思いました。ありがとう。

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本当は学校に行きたいんだよね

●お母さんの育て方が間違っていたのかな。10歳の男の子が、ずーっと家のなかにいるのを見ているのはつらい。本当は友だちと遊びたいんだよね。学校だって行きたいんだよね。時間がたったらできるのかな。待つしかないのかな。

子どもには変わる力がある

霜村 麦(メンタルクリニックあんどうカウンセラー)

 「お母さんの育て方が間違っていたのかな」というところで、ずいぶんご自分を責めておられることが感じられて、胸が痛みました。また、「時間がたったらできるのかな。待つしかないのかな」というところでは、もう打つ手がないという、お母さんの困りはてた声が聞こえてくるような気がします。

 このお母さんは、これをわが子へのメッセージとしてお書きになったと思うんですが、私はこれを読んで、お母さんがここまで頑張っていらっしゃるのに、学校の先生とか、このお子さんにもっとかかわれるはずの大人たちは何をやってるんだろうと、そちらのほうが気になってしまいました。10歳のお子さんだったら、大人が一生懸命かかわれば、ものすごく変わる力があるはずなんです。なんとかできるはずなのに……と。お母さん、大変でしょうけれど頑張ってください。

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暴力はもうやめて一緒にあったかいご飯を食べよう

●子どもと一緒に生活することが、やはり大事なこと。暴力も、言葉の暴力も、すべてやめて、ゆったりと自分のやりたいことを見つけて歩んでいこうね。家庭であたたかいご飯を一緒に食べようね。
(不登校をきっかけにお子さんが暴力をふるうなど、親子関係がうまくいかなくなり、別々に暮らしておられるお母さんからのメッセージ)

親だけでかかえこまないで

荒井 裕司(登進研代表)

 私は、こういう状態のお子さんをもつご家庭に、何度も行った経験があります。家のなかはガラスが飛び散り、すべての家具は倒れていて足の踏み場もないというような状況のご家庭がたくさんありました。特にこのご家庭では、お子さんと一緒に生活することができないほど状況が厳しいということですから、このメッセージには非常に切実なものを感じます。

 このような場合は、親子関係が非常にむずかしい状況にあると思いますので、親御さんの力だけでなんとかしようとするのではなく、さまざまな相談機関や、このお子さんにかかわれる外部の人々の力を借りて、みんなが力を合わせてかかわっていく必要があるかと思います。なにかお手伝いできることがありましたら、必ずやりますので、お声をかけてください。

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