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Q&A 学校をかえて良いとき、悪いとき ~パート2~
2008年6月15日に開催された登進研バックアップセミナー62の第2部「Q&A 学校をかえて良いとき、悪いとき」の内容をまとめました。

ここからは、以下の4人の回答者が、会場からの質問に答えます。 | |
回答者 | 齊藤真沙美(世田谷区教育相談室心理教育相談員) 池亀 良一(代々木カウンセリングセンター所長) 荒井 裕司(登校拒否の子どもたちの進路を考える研究会代表) 田中 雄一(登校拒否の子どもたちの進路を考える研究会副代表) |
Q1 学校から退学になるかも…といわれて
私立中学の1年生ですが、40日以上欠席すると退学かも…といわれました。もしそうなった場合、1年生として受け入れてくれる学校はありますか。現在、10日欠席しています。
A1:私立中学は難しいが、公立なら受け入れ可能(回答者:田中雄一)
「退学かも」というのは大げさというか、言葉のあやで、学校側は、おそらく原級留置(留年)の可能性があると言っているのだと思います。ただし、現実的にみて、中1の段階で留年になることはあまり例がありません。学校側の対応としては、それよりむしろ2年、3年と進級させたあと、3年になって卒業させるかどうかということを問題にしてくると思われます。
また、退学になった場合、1年生として受け入れてくれる学校はありますかというご質問については、私立中学から私立中学へ転入するのは非常に難しいと思いますが、公立中学なら受け入れは可能です。地元の公立中学は、小学校で一緒だった生徒がいるので通いづらいということであれば、公立中学に籍を置きながら、ちょっと離れたところにあるフリースクールに通うという方法もあります(フリースクールなどに通った日数は、在籍校の校長の裁量で出席日数に換算されます)。
なお、フリースクールにもいろいろあって、ただ子どもが集まって遊んでいるだけのような場所もありますので、学習支援、心のケア、居場所づくりなどを複合的にやってくれるところを選ぶといいでしょう。
Q2 同世代の友だちをつくるには?
3回目の出席になります。おかげさまで「待つ」ことを学び、日々子どもを見守り、誘い出し、元気になってきました。ひとりでファストフードを食べて買い物をしてくるなど、お風呂も入らずひきこもっていたころに比べ、信じられないほど元気になりました。
ただ、元気になったことで同世代の友だちをほしがるようになり、親だけではつとまらない時期が来たようです。現在、サポート校の2年生で、週1~2回、教科以外のレジャーのときだけ出席し、級友とはなじめません。転校先を探すか、趣味の居場所を探したほうがいいのか悩んでいます。
A2:親が先に立ってひっぱり出すのは感心しない(回答者:池亀良一)
元気になってきたとのことで、なによりです。お子さんのなかに、徐々にエネルギーがたまってきたのでしょう。不登校の子どもたちの悩みのひとつが、同世代の友だちができにくいということです。
同世代の子どもは遠慮がないので、親御さんやサポート校の先生のように、じっくり話を聞いてくれたり、いろいろ配慮してくれるわけではありません。お子さんが同世代の子どもとつきあえるようになるまでには、もう少しエネルギーがたまってくる必要があるのだと思います。
でも、レジャーのときは出席できるわけですから、これがきっかけになるのではないでしょうか。つまり、楽しいことなら同世代の子と一緒にやれるということです。いまできていることを認めてあげて、まずは、そこで自信をつけていくことが大切です。
転校したほうがいいのか、趣味の居場所を探したほうがいいのかと、親はつい先へ先へと望んでしまいますが、ここはやはり子どもにエネルギーがたまるまで待つことが大事です。
エネルギー不足の状態では、いくら環境を変えても同じことのくりかえしです。いまの学校でも週1~2回は出席できるのですから、いまその子ができていることをさらに伸ばしていくという考え方でいいのではないかと思います。
もちろん趣味などでその子が行きたい場所があれば、どんどん行ってかまいませんが、親が先に立ってひっぱり出すのは感心しません。本人の気持ちを聞いて、「こんなところがあれば行ってみたい」といわれたら情報を提供して反応をみる、というように、あくまで本人の意思を大切にして、あせらないことがいちばんです。
Q3 通信制高校に関するご質問
・中高一貫校に通う高校3年の女の子です。高校2年の秋から不登校になりました。本人は、通信制高校へ転入したいと言っていますが、通信制高校とはどういうものなのか、内実をよく知りたいので教えてください。
・高校1年の男子です。中学2年の3学期から卒業まで不登校でしたが、高校に進学する意思はあり、私立高校の普通科に入学しました。しかし、4月から10日ほど通っただけで、また不登校になりました。本人は、高校になじめないと言っており、今後の進路変更、あるいはサポート校への編入などを、どのようなタイミングで考えるべきなのでしょうか。
・高校2年の男子です。昼夜逆転の生活で、「毎日学校に行くのがいやだ。週1回くらいなら行ってもいい」という希望があり、通信制の学校に編入しようと考えています。本人と一緒に学校見学にも行きました。ただ、中学時代から不登校ぎみだったので、自分できちんとレポートを提出できるか、昼夜逆転でゲーム漬けの生活がなおるのかが心配です。
・次女が小6の秋から中2の夏まで不登校で、現在は週3?4日、社会と国語のみ授業に出られるようになりました。本人は進学を希望しており、私学に行かせたほうがいいか、通信制の学校にするか迷っています。
A3:全日制と通信制の違いを理解し、自分に合った学校を探そう(回答者:荒井裕司)
通信制高校やサポート校に関するご質問について、まとめてお答えいたします。
まず、全日制高校と通信制高校ではどこが違うかというと、全日制(単位制高校を除く)では出席することが前提となっています。ですから、欠席日数がオーバーすれば留年や中退となります。
中学時代に不登校だった子が高校に進学した場合、その高校になじめれば問題はありませんが、友だちができなかったり、勉強についていけない、集団に入っていけないなどの問題から、また通えなくなってしまうケースも多いのです。
一方、通信制高校は、出席を前提としていません。基本的には学校に通わずに、定期的なレポート提出と年間20日ほどのスクーリング(学校に行って授業を受ける)で、高校卒業に必要な単位を取得できるので、不登校の子どもたちにとっては、比較的学びやすいシステムだといえます。
ただし、学校に通わずに、自分ひとりで勉強するということはなかなか難しい面があります。わからないところがあっても教えてくれる先生はいませんから、わからないところが重なると投げ出してしまう子も出てきます。自宅だとつい怠けたくなってしまうので自己管理能力も必要になります。
そこで、通信制高校に在籍する子どもに対して、そうした学習面でのサポートを行うために生まれたのが、いわゆる「サポート校」とよばれる民間の教育機関です。サポート校に入学した生徒たちは、通信制高校に在籍しながら、ふだんはサポート校に通って授業を受け、わからないことがあったら先生に教えてもらったり、レポート作成の指導を受けたり、一般の高校と同じような学校生活を送ることができます。
しかも、在籍校は通信制高校ですから、欠席日数は問題になりません。そのため、毎日通いたい子、まだ週2日くらいしか通えない子、午後にならないと来られない子など、それぞれが自分のペースで通うことができます。そのなかで気の合う友だちができたり、学習面で自信がついてくると、だんだん学校に来るのが楽しくなり、週2日が3日になり、ついには毎日来られるようになったり……ということも少なくありません。
サポート校の生徒のほとんどは不登校の経験をもっていますから、学校側の対応にもそれに配慮したものとなっており、クラスメイトがみな同じ経験をもっていることから子ども自身も安心して通えるというメリットがあります。
別の学校に変わりたいと思ったら、こうした全日制と通信制の違いなどを理解したうえで、まずはいろいろなところへ学校見学に行きましょう。学校のシステムやカリキュラムだけでなく、できれば本人の目で、学校の雰囲気やそこにいる生徒たちの雰囲気が自分に合っているかどうかを見ることも大切です。そして、最終的には本人に結論を出させること、これがなによりも重要です。
なお、転編入の時期については、通信制やサポート校の場合はいつでも受け付けていますので、本人の状態や気持ちを第一に考えて時期を決めるといいでしょう。
一方、全日制の高校では、7月、12月、3月の各学期末を中心に転入試験を実施しています。定員に空きがなければ実施しないこともあるので、直接学校に問い合わせてみてください。
Q4 転校するかどうか子どもに考えさせるのに、期限をつくってはいけないでしょうか。
A4:期限を設けてもいいが、プレッシャーをかけないこと(回答者:齊藤真沙美)
お子さんの年齢がわからないので一般的な話になりますが、たとえば高校の場合、いま荒井先生からもお話があったように、学校によっては転入試験の時期が決まっているところもあります。
公立の小中学校に転校する場合でも、一般的には、学期の途中ではなく、学期の区切りの時期とか、学年の変わり目が望ましいと考えられます。
ですから、いつごろまでに決断しなければならないという期限があるなら、期限をつくってはいけないということはありません。本人にも「このあたりまでに決めないと難しいからね」と話して、情報として物理的な期限を提示することはかまわないと思います。
逆に、それを知らずに結論を先のばしにして、あとで子どもが「本当はこうしたかったのに……」と後悔することにもなりかねませんから。
ただし、「いつまでに決めないといけない」「ここまでに決めないと後がない」というような伝え方をすると、子どもにとっては大きなプレッシャーになりますので、「そのときまでに答えを出せない」という“答え”もあるということを、親御さんは頭に置いていてください。
そして、その頃までに、もし返事がなかったら、「まだ決められないということだよね」「もう少し様子をみて考えてみようか」ということでいいのではないでしょうか。
高校生の場合は、学校から「留年するか中退するか決めてください」といわれることもあると思います。別の学校にかわりたいとか、留年してもこの学校にとどまりたいとか、子どもの意思がはっきりしている場合はいいのですが、決断できない場合もたくさんあるでしょう。
その場合、中退を選ぶと、どこにも所属していない状態になり、精神的に不安定になる要因ともなりますので、できれば留年というかたちで学校に籍を残しておいたほうがいいでしょう。
そして、子ども自身に「こうしたい」という意思が出てきた段階で新しい所属先を決め、いまの学校をやめるというやり方がいちばんスムーズに進むのではないかと思います。
Q5 高3女子。進路選択に向けて親はどう関わっていけばいいか
高校3年の女の子です。中2の秋から不登校になり、現在は少しずつ学校に行けるようになって、進路のことも考えはじめているところです。ほかの子が受験に向けて頑張っているなか、背中を押したくなる気持ちを抑えています。学力的には不十分であせってしまうのですが、どのように関わり、見守ることが大切なのでしょうか。
A5:まず、子どもの不安やあせりを理解することから(回答者:齊藤真沙美)
中2の秋から4年間、おそらくこれまでいろいろなことがあって、それをこのお母さんは一生懸命支えてこられたのでしょう。そして、少しずつ学校に行けるようになり、自分の進路を考えるところまでエネルギーがたまってきたのだと思います。
お母さんとしては、今後のことを考えて、不安になったり、あせっているのだと思いますが、本人は、どんなことを不安に思い、どんなことにあせりを感じているのでしょうか。
そのあたりのお子さんの状況によっても対応は違ってくると思いますが、進路のことを考え始めているとのことですから、こんな大学があるとか、こんな進路先があるといった情報を伝えたり、資料などを見えやすいところに置いておくといったことは、やってもかまわないと思います。
その結果、子どものエネルギーのたまり具合によって、「この学校に行きたいから、頑張って勉強しよう」という方向に向かうかもしれませんし、そうならないかもしれません。いずれにせよ最終的にどうするかは、本人が決めることですから。
そうはいっても、お母さんがあせりを感じるのは当然のことで、その不安な気持ちを子どもに向けてしまうこともあるかと思います。たとえば、子どもが勉強もせず、テレビばかり見ていたりすると、「いったいどうするつもりなの?!」「そんなことで進学なんかできるわけないでしょ!」などと言ってしまうこともあるでしょう。
でも、つい言葉が出ちゃったというときはしかたがないというか、それでかまわないんじゃないでしょうか。お母さんだって人間ですから、いつもいつも言いたいことを我慢していられるわけがありません。ただ、そのあとで、「お母さん、ちょっとあせっちゃってさ。言いすぎちゃったね」などと、ひとこと言っておくといいですね。
そして、そういうやりとりのなかで、子どもがどんな不安やあせりを感じているのかを、なにげなく聞き出したりできれば、お母さんのサポートもしやすくなるのではないかと思います。
あとは、お母さん自身の不安な気持ちを話すことができる人、ご主人でも、友だちでも、カウンセラーでもいいですが、そういう人が一人でもいると、お母さん自身もちょっと余裕をもって子どもに関わっていけるのかなと思います。
Q6 海外留学のメリット、デメリットとは?
現在、私立中学の2年生です。自分のいまの状況を変えるため、海外留学をしたいと言っています。留学あっせんの会社のなかには、不登校の子どもを対象として留学をすすめているところもあります。メリット、デメリットを教えてください。
A6:留学する前に、短期スクールなどにトライしてみては?(回答者:田中雄一)
留学は、一種の「転地療法」と考えられます。つまり、現在の環境からしばらく離れて気分転換をはかり、心機一転やり直そうという考え方です。不登校の問題についても、海外留学によってなんとか解決できないかということで、留学のあっせんを行っているところがあります。
留学のメリット、デメリットを知りたいというご質問ですが、そのお話しをする前に、まず、本人の性格などを客観的にきちんと把握してからでないと、留学はなかなか難しいということを申し上げておきたいと思います。
本人が留学を強く希望しているのであれば、すぐに本格的な留学をするのではなく、たとえば、いまの時期(6月)なら夏の「サマースクール」のようなものが必ずありますし、あるいは、音楽や語学留学など目的をしぼった短期のスクール的なものでホームステイを含めたあっせんを行っているところもあります。
現在の学校に籍を置きながら、そういう短期のスクールなどにトライしたうえで、やっていけるかどうかを判断されたほうがいいかなと思います。
海外留学のメリットとしては、ひとつは、自分が不登校であることを誰も知らないところに行くことで、本当の自分を出すことができるということ。また、留学先の言語を身につけることができるのもメリットでしょう。
デメリットとしては、ひとつは、社会や価値観の違いがあるので、そのなかで自分がうまく表現できるかどうか、仲良くやっていけるどうかという点です。
もうひとつは、日本とは教育システムが違うので、海外の中学校を卒業したあと、やはり日本に戻って日本の高校に行きたいと思った場合、問題が出てくる可能性があります。
できれば事前に文部科学省に問い合わせて、これこれの時期に海外の中学校に入学して、これこれの時期に卒業するけれど、その後、日本の高校に入学できるかどうかということを確認しておくといいでしょう。海外の中学校を卒業し、日本の高校を受験する場合は、「海外帰国子女」扱いになりますが、帰国子女の入学については受け入れる学校もできるだけ配慮するようにとの文科省の通達も出ていますので、そのへんもあわせて問い合わせていただければと思います。
なお、海外の中学校を卒業したあとに、そのまま現地の高校、大学へと進むのであれば、とくに問題はありません。