

第26回 第34回 第39回 第40回
第44回 第53回 第54回
第55回(第1部)
第55回(第2部)
第57回 第58回 第59回 第61回
第62回 第63回(第1部) 第63回(第2部)

2025年度 2024年度 2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度 2005年度 2004年度 2003年度 2002年度 2001年度 2000年度 1999年度 1998年度 1997年度 1996年度 1995年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度 2005年度 2004年度 2003年度 2002年度 2001年度 2000年度 1999年度 1998年度 1997年度 1996年度 1995年度
いま、子どもは回復途上のどこにいて、親は何をすればいいのか? Part.1
登進研バックアップセミナー124 第1部講演抄録(2026年5月17日開催)
講師 海野千細(八王子市教育指導課心理相談員)

回復プロセスにおける3つの時期
「まったく登校できなくなった当時はまるで真っ暗なトンネルの中に入ってしまったようで、どこに出口があるのか、この先どうなるのか、見当もつきませんでした」
あるお母さんがつぶやいた言葉です。
このお母さんのように、わが子の不登校に対する戸惑いや先々への不安を抱えながら毎日を過ごしておられる親御さんも多いことでしょう。
本日は、私と登進研が協力して作成した「子どもの回復プロセスチェックリスト」をもとに講演を進めますが、その前に「回復プロセスのイメージ図」(下図)についてご説明したいと思います。

不登校の回復プロセスにおいて子どものメンタル面に注目すると、どの子もおおむね、次のような3つの時期を経過します。
不安・緊張期 → 消耗・防衛期 → 安定・充足期
この3つの時期のうち、「不安・緊張期」に相当するのが、上の「回復プロセスのイメージ図」のフェーズ1〜2、「消耗・防衛期」に相当するのがフェーズ3〜5、「安定・充足期」に相当するのがフェーズ6〜7と考えられます。
なお、これらのフェーズについては個人差が大きく、どの子も必ず1〜7のフェーズを経過するとはかぎりません。たとえば、フェーズ1から、フェーズ2をスキップしてフェーズ3に進む場合もあるということです。
また、実際にはフェーズの境界もそれほど明確ではなく、固定的なものでもありません。子どもの状態像についても同様で、フェーズ間で前後したり、重なる場合もあります。各フェーズの時間的な長さや子どもの精神的な不安定さの度合いも、本人の感じ方や家族関係、学校の状況等によって変化します。
以上のことに留意しながら、これから紹介する「子どもの回復プロセスチェックリスト」(下表参照)や「親の対応のポイント」を参考に、それぞれのご家庭で子どもの様子や家族とのかかわり、学校の状況等をあらためて確認し、今後の対応を考えたり、見通しを立てるために役立てていただければと思います。

回復への一歩はすでに始まっている
「不登校」というと、多くの人は家にひきこもっている状態をイメージすると思います。そして、「不登校からの回復」というと、そこから一歩踏み出し、少しずつ登校できるようになった状態を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし私は、不登校になる手前の「不安・緊張期」あたりから回復に向けた動きが始まっているのではないか考えています。
なぜなら、完全に不登校になる前に「ときどき休む」という状態が出てきた場合、そのときすでに子どもは精神的に苦しい状態に置かれており、《フェーズ1》のチェック項目にもあるように、その苦しさを腹痛や頭痛などの「身体症状」であらわして(無意識のうちに)周囲に助けを求めているからです。
「周囲に助けを求める」ことは、回復に向かって一歩を踏み出すことであり、その意味で、この時期の子どもはすでに回復に向かって動き出している(とてもそうは見えないと思いますが)と考えられるのではないかと思います。
不登校は、親にとっては確かに困った問題ではあるけれど、いままで自分の苦しさ、しんどさを口に出せなかった子が、「不登校」というかたちで「苦しい!」「助けて!!」とSOSを出せるようになったという意味で、子どもにとっては非常に大きなプラスの面があります。
学校にも行かず、家でゴロゴロだらだらしている目の前のわが子も、もしかしたら不登校というかたちで私たちに助けを求めているのかもしれない…。そういうとらえ方ができるようになると、わが子に対する見方も大きく変わってくるのではないでしょうか。
「不安・緊張期」における子どもの状態
これから、不安・緊張期 → 消耗・防衛期 → 安定・充足期という回復プロセスに沿って、それぞれの時期における子どもの状態について説明していきます。
まず、「不安・緊張期」とは、完全に不登校になる手前の時期のことです。上に掲げた「子どもの回復プロセスチェックリスト」に示した項目は、いろいろな出来事をマイナスに感じることが増えてきて、だんだん学校に行くことがつらくなってくるときに子どもによくみられる状態像です。
たとえば、学校で友だちにからかわれたとき、「嫌だな」「恥ずかしいな」とネガティブに受けとめる子もいれば、「僕って、けっこうみんなから注目されているんだな」とポジティブに受けとめる子もいます。要は出来事の問題ではなく、その出来事を子どもがどう受けとめたかがポイントになるわけです。
クラス全員の前で担任に怒鳴りつけられたといった強烈な体験であれば、おそらくどんな子でも大きなストレスとなり、マイナス体験になるでしょう。その一方で、教室内のガヤガヤした音や落ち着かない雰囲気がとても苦手で、耐えられないくらいストレスを感じている子もいます。ペンケースを忘れたとき、友だちにどうやって「鉛筆を貸して」と頼めばいいかわからなくて泣き出してしまう子もいます。
親からすれば、「なんだ、そんなこと?」と思うような出来事でも、その子がそれをストレスと感じれば、ストレスになります。
心の中にコップがあって、その子がある出来事をマイナスに感じると、ストレスのしずくがポタッポタッとコップに落ちてたまります。いろいろな出来事をマイナスに感じるたびにそのしずくはどんどんたまっていき、まだコップからあふれてはいないけれど、7〜9割くらい水がたまってきている状態がこの「不安・緊張期」であるといえるでしょう。
●見逃しやすい「不安・緊張期」の異変
そうやって心の中のコップにストレスがたまってきたとき、どのくらいのストレスがかかれば不安が表面化するかは子どもによって異なります。
たとえば、《フェーズ1》のチェック項目にある「学校には通っているが、朝ときどき腹痛や頭痛を訴えることがある」「学校から『具合が悪いので早退させる』との連絡があった」「だるさや疲れを訴えることが多い」など、身体の不調が出てくることで、親御さんにも「なんとなくいつもと違うな」という感じが伝わってくる場合もあります。
両親が共働きのご家庭では、子どもが具合が悪くて医者に連れて行かなければならないとなると、妻あるいは夫が仕事を休まざるをえない場合があります。どちらが休むかでちょっともめたりすることもよくあります。つまり、「子どもの具合が悪くなる」ことは、親からすれば「そうなってほしくない」出来事なんです。
ですから、「不安・緊張期」のときに、もし子どもが小さなサインを出していても、親のほうはそのサインをキャッチする余裕がなかったりします。その結果、子どもの異変に気づかず、見逃してしまうこともめずらしくありません。
「不安・緊張期」における親の対応のポイント
「不安・緊張期」における親の対応のポイントは、次の2つです。
①「子どもの小さな変化はSOSのサイン?」と考えると見えてくるものがある
②「身体の痛み」は「心の痛み」と考えて、丁寧に手当てする
「①『子どもの小さな変化はSOSのサイン?』と考えると見えてくるものがある」については、その多くは後になって気づくことですが、ふり返ってみると、「あのとき、もしかしたらあの子は(口には出さなかったけど)苦しいと伝えたかったのかもしれない」と思い当たることが出てきたりします。
「②『身体の痛み』は『心の痛み』と考えて、丁寧に手当てする」については、子どもの「頭が痛い」「おなかが痛い」という訴えは、実は「心が痛い」と言っているんじゃないかなと考えると、納得のいくことがあります。
もちろん身体の痛みはフィジカルなものが原因になっている場合もあり、すべてメンタルが原因と決めつけるのは危険です。しかし、そもそも「痛み」というものは心身のなんらかの不調を伝えるサインですから、「甘え」「怠け」としてスルーするのではなく、大事なメッセージとして受けとめてほしいと思います。
●「身体症状」が意味するもの
《フェーズ2》のチェックリストに「月曜日など休み明けは、発熱・腹痛等の体調不良で休むことが多い」という項目があります。よくあるのは、37.6℃とか微妙な熱が出るケースで、この程度の熱だと学校を休ませるかどうか、親として悩ましいところです。
でも具合が悪そうだし、「じゃあ、今日は休もうか」となると、子どもは部屋で寝ているわけですが、なぜが昼頃になると元気になるんですね(笑)。
それで、あらめて熱を測ってみるとだいたい36℃くらいに下がっている。この時点で「仮病じゃないの?!」と疑った親御さんもいらっしゃるのではないかと思います。
しかし、これは嘘でも仮病でもなく、実際に朝の時点では熱が出るんです。しかも、38〜39℃の高熱ではなく、37℃台の微妙な発熱。これがほぼ毎朝続く。こうした身体症状がひとつのサインとしてあらわれることがよくあります。
この時期に医療機関を受診すると、「起立性調節障害」「慢性疲労症候群」「大腸過敏性症候群」といった診断名がつく場合があります。つまり、「メンタル面の不調」が表面化する前に、「身体的な不調」があらわれたことによる診断です。
こうして診断名がつけば、親としても一応納得がいくし、子どもを休ませやすいし、学校にも理由が言いやすいので、ほっとする方も多いようです。
《フェーズ2》のチェック項目に、「朝、なかなか起きられなくなった」「無理に起こそうとするとすごく機嫌が悪くなったり、そのまま休んでしまうこともある」といった状態像があるように、この時期は完全に不登校ではないものの、だんだん学校を休む日が増えてきます。
欠席が増えるということは、その子の苦しさが少しずつ増えてきていることを示しています。ですから、この時期を「不登校が始まる時期」と機械的にとらえるのではなく、「わが子が徐々に苦しくなってくる時期」という見方をすれば、サポートの仕方もおのずと明らかになってくるのではないでしょうか。
「消耗・防衛期」における子どもの状態
「不安・緊張期」の次は「消耗・防衛期」ですが、この時期はこれまでストレスや葛藤を抱えながらもなんとかしのいできたけれど、ついに心の中のコップがストレスでいっぱいになり、あふれ出てきた状態といえます。ギリギリまで耐えてきた心が限界を超え、とうとう学校を休みはじめるわけです。
「消耗・防衛期」の「消耗」とは、ここに至るまでの間に本人がエネルギーを使い果たしているイメージ(ガス欠、電池切れなどといわれる状態)があるからです。一方、「防衛」については、親が子どもを学校に行かせようとあの手この手で干渉してくるため、そこから「自分を守ろうとする」時期だからです。
なお、「不安・緊張期」から「消耗・防衛期」への移行期には、《フェーズ2》の後期と《フェーズ3》の状態像が重複してあらわれる場合も少なくありません。

上表の《フェーズ3》のチェックリストに「登校しない理由を問いただしても頑として口をきかない」という項目がありますが、これは小学校高学年から中学生くらいによくみられる行動です。
この年代で学校に行かない理由を言葉で説明するケースはきわめて少なく、親がいくら問いつめても、貝のように黙りこくってしまう子がほとんどです。
一方、小学校低学年くらいの子は、「何かあったの?」と聞くと、「隣の席の◯◯ちゃんが意地悪をするんだ」と理由らしきことを言ったりしますが、多くの場合、それはただのきっかけにすぎません。
それ以前にいろいろな出来事が積み重なって、ストレスが飽和状態になっているところへ、きっかけとなる出来事が起こり、その一滴でコップの水の表面張力が崩壊したということであり、その子はすでに学校を休まざるをえない状態になっていたのだと思います。
消耗・防衛期《フェーズ3》における親の対応のポイントト
「消耗・防衛期」の《フェーズ3》における親の対応のポイントは、以下のとおりです。《フェーズ3》は、親子関係がもっとも難しくなる時期ですから、親の対応も、なかなか一筋縄ではいきません。
《フェーズ3》における親の対応のポイント
①原因探しは子どもにとってマイナスになることが多い
②子どもを傷つけないために、親が自分の怒りや不安とつきあう方法を見つける
③迷ったときは、試行錯誤しながら手応えのある対応を見つけていく
④子どもが安心すること・喜ぶこと・元気になることを3つ以上リストアップする
⑤子どもが怒ること・嫌がること・不安になることを3つ以上リストアップする
⑥「見守る」「受け入れる」とは、子どもが安心するように働きかけること
●原因追及は傷ついた子どもをさらに追いつめる
「①原因探しは子どもにとってマイナスになることが多い」ことはすでにご存じの方もいらっしゃるかと思います。しかし、それでも原因探しをしたくなるのが親というものなんですね。
親に限らず、私たちは何か問題が起こると、「そこにはきっと原因がある」「その原因を取り除けば問題は解決する」と考えてしまいがちで、わが子の不登校についても、つい原因や理由をはっきりさせたくなってしまうのです。
ところが、いま子どもは心の中のコップからたまりにたまったストレスがあふれ出している状態ですから、メンタル的には傷だらけです。
そんなときに「学校で何かあったんじゃないの?」と問いつめることは、その傷口に塩を塗り込むような作業です。
本人にしてみれば、「もう触らないで」「そっとしておいて」という心境でしょう。親の問いかけに答えようとして、学校であった嫌な出来事や苦しい場面を思い出すだけでもつらいのに、「どうしてそんなことを言わせようとするの?」というのが正直な気持ちだろうと思います。
中学生くらいになっても自分の状態を言葉で説明できない子もいます。何を言ってもどうせ怒られるだけだと思って理由を言わない子もいます。
つまり、原因探しをすればするほど、結果的にはさらに子どもを苦しめ、追いつめることになるわけです。
もうひとつ、親が原因や理由を問いつめてばかりいると、子どもはしだいに心のシャッターを下ろし、親に助けを求めようとしなくなります。
そもそも子どもは「自分が学校に行けなくなったので、お母さんお父さんは怒っている」と思っていますから、自分がどんなに困っていても、親には言えません。そのうえ「何か理由があるんでしょ?」「はっきり言いなさいよ!」などと詰め寄られたら、ますます言いにくくなってしまいます。
このように理由や原因を問いつめる行為は、多くの場合、子どもにとってマイナスに作用するだけだということを覚えておいてほしいと思います。
では、「原因探し」は絶対にしないほうがいいのかというと、ひとつ心配なことがあります。それは親御さんが「本当は学校に行かない原因を聞きたいけど、聞かないほうがいいんだよね…」と我慢していると、ずーっとモヤモヤしたまま子どもと過ごすことになるのではないか、ということです。
だったらいっそ思いきって聞いてみたほうがスッキリするかもしれません。聞いてみて本人がつらそうだったら、「話せないんだね」「だったら話さなくていいよ」「ごめんね」とあやまればいいことです。
頭の中だけで「原因や理由にはふれないほうがいいんだよね」とわかった気になるのではなく、どうしても聞いてみたいことがあるなら実際に子どもに聞いてみる。そして、そのときの子どもの困惑した表情などを目の当たりにして、「ああ、やっぱり聞かないほうがいいんだ」と実感する。そういう体験をしたほうが、その後の親子関係にとってはプラスに働くのではないかと思います。
ちなみに、《フェーズ3》の「親の対応のポイント」であげた「③迷ったときは、試行錯誤しながら手応えのある対応を見つけていく」とはこのことです。
たとえば、原因を聞かないほうがいいのか迷ったら実際に聞いてみて、子どもの反応によって出したりひっこめたりいろいろ試しながら、できるだけ子どもにダメージの少ない聞き方を考える、あるいは聞かないことにする、ということです。
●親自身の怒りや不安をどうコントロールするか
《フェーズ3》の「親の対応のポイント」には、「②子どもを傷つけないために、親が自分の怒りや不安とつきあう方法を見つける」という項目もあります。
親が不登校の原因探しをしたくなる理由や背景を考えると、まず、「他の子が普通に学校に通っているのに、なぜうちの子は行けないのか」という怒りがあるような気がします。わが子の不甲斐なさ、情けなさに対する怒りですよね。
もうひとつは、「この先どうなってしまうんだろう」という不安に対して、自分を安心させるために、子どもにあれこれ言いたくなるのではないかと思います。
この怒りや不安をどうコントロールするかですが、目の前に子どもがいるからイライラしたり、怒りに火がつくわけですから、要は「子どもと距離をとるしかない」のではないかと思います。
たとえば、お父さんが会社員でお母さんが専業主婦という家庭を考えてみると、お父さんはだいたい仕事に行っている間は子どものことを忘れられます。対して、お母さんはひとつ屋根の下でいつも子どもと一緒にいるわけですから忘れることなどできません。
だったら、家にいてもできるだけ子どもと別の部屋にいるようにするとか、買い物に行ったり、図書館やカフェでちょっとゆっくりするとか、物理的に子どもと離れる時間をつくることが大切です。ストレス解消法は「入浴中にiPadで海外ドラマを観ること」というお母さんもいました。
お母さんは「子どものことが最優先」「頭の中は子どものことばかり」になりがちですが、まずは自分自身の心身の健康を第一に、子どものことは二番目くらいの気持ちでいてほしいと思います。
「不安」に対しては、自分は何が不安なのかを書き出してみると具体的な不安の中身が明らかになります。たとえば、「進級や卒業はできるのか」「不登校でも入学できる高校はあるか」といった疑問はネットですぐ調べられますから、小中学校で不登校でも進級・卒業できる学校の情報等を簡単に収集することができます。
不安の多くは情報が得られることで解消します。ですから、まずは自分はどんなことが不安なのか、この先どんなことが心配なのかを、自分で整理してみることをおすすめします。不安を解消する手立てはたくさんあるはずです。
消耗・防衛期《フェーズ4》《フェーズ5》における親の対応のポイント
ここからは「消耗・防衛期」の後半にあたる《フェーズ4》と《フェーズ5》について説明したいと思います。
この時期になると、いくら怒っても、お説教をしても、子どもは動かない(親の思いどおりにはならない)ことがわかってくるので、親のほうも「しようがないなあ」と半ばあきらめて、子どもの現状を黙認するようになってきます。そのため、当初に比べて親子関係が安定してくる時期でもあります。
この時期の親の対応のポイントは、以下のとおりです。
《フェーズ4》《フェーズ5》における親の対応のポイント
①ゲーム時間の長さ等でもめる場合は、親も子も納得のいくルールを設定する
②当面は子どもと「雑談ができる関係」を目標にする
③子ども自身が「援助してもらえている」と感じるような援助を心がける
④「子どもの要求」と「親の意向」を交換条件にすると、互いに傷つく結果になりやすい
⑤親の思いを「I(私を主語にした)メッセージ」で伝えてみる
⑥担任とは定期的に連絡を取り、親子のその時々の状態に理解を深めてもらう
⑦医療機関等を利用するときは、その予定や結果を子どもに伝える
●ゲームのルール作りは「期間限定」がポイント
対応のポイントに「①ゲーム時間の長さ等でもめる場合は、親も子も納得のいくルールを設定する」とありますが、実際、この時期は多くのご家庭でゲームをめぐって親子のトラブルが絶えなくなります。
ゲームについては、ほとんどの場合、いくらルールを作っても簡単に破られてしまうことが多いんです。望ましいのは子どもが納得するルールを設定することですが、多くのご家庭では子どもが守れないようなルールを親が一方的に決めてしまいます。その結果、「こんなルール、守れなくても仕方がない」「守らなくて当たり前」といった感じになりやすいのですが、それは避けたいところです。
そのためのポイントは「期間限定」でルールを作ること。一度作ったルールをずっと守るのではなく、とりあえず1週間、2週間やってみて、無理がないかどうか確認するわけです。それで大丈夫となればそのルールで継続すればいいし、無理がある場合は修正を加えてやり直す。
この考え方なら、ルールを守れなくてもルールを破ったことにはならないし、無
理ならルールを変更することになるので、親にとっても子どもにとっても「ルールを破った/破らない」で言い争いにならなくて済みます。
●「〇〇するなら、〇〇してあげる」という交換条件の落とし穴
対応のポイント④は「『子どもの要求』と『親の意向』を交換条件にすると、互いに傷つく結果になりやすい」ですが、これはこの時期に起こりやすい問題として「子どもが親にさまざまな要求を出してくる」ことがあるからです。
小さい頃からいろいろ我慢してきた子ほど、これまで抑えてきた思いを吐き出すようにガンガン言ってきます。
そんなとき、親がやってしまいがちなのが交換条件を出すこと。「新しいゲームソフトが出たから買ってよ」と子どもに言われて、「買ってあげるから、月曜日から学校に行きなさい」と応じるパターンです。
しかし、子どものほうもけっこうしたたかで、ゲームを買ってもらうと月曜日だけ学校に行き、翌日からまた家でゲーム三昧の生活です。お母さんは「月曜日から行くって言ったじゃない!」と子どもを責めますが、子どもは「だから行ったよ、月曜日は」などとしれっとしています。
ここで大事なのは、「子どもの要求に応えること」と「学校に行くこと」を結びつけてはいけない、ということです。
たとえば、子どもが人気ブランドのスニーカーを欲しがっていたら、学校に行こうが行くまいが買ってあげればいいし、それができない事情があるならそう説明して断ればいいんです。しかし、スニーカーを買うことと学校に行くことを結びつけてしまうと、要求がさらにエスカレートしたり、親子関係の悪化につながりますから注意が必要です。
●親の思いは「Iメッセージ」で伝える
対応のポイントの「⑤親の思いを『I(私を主語にした)メッセージ』で伝えてみる」については、少し説明が必要かもしれません。
毎日家にいるわが子を見ていると、生活態度をはじめ気になることが多すぎて、つい文句を言いたくなりますよね。ずーっとゲームをやっていたりすると、「いつまでやってるの!」と思わず口に出てしまう。
そのときの主語は「《あなた》は、いつまでゲームをやってるの!」というように、私《I》ではなく、あなた《You》になっているはずです。これを《Youメッセージ》といいますが、主語が《あなた》になると、どうしても相手を責める、とがめる、問いつめるという方向に行きがちです。
これを《Iメッセージ》(主語を私にして自分の思いを伝えるコミュニケーション方法)で言い換えると、「私は、あなたが一日中ゲームをやっているのを見ると本当にムカつく」となります。こういう言い方であれば、いくら言ってもかまいません。なぜなら、「私はムカつく」と言っているだけなので、子どものほうは責められたり怒られているような感じがしないからです。
そのほか、《Youメッセージ》を《Iメッセージ》に言い換えるとどうなるか、例をあげてみました。参考にしてください。
《You》「少しは勉強をやったほうがいいんじゃないの!」
↓
《 I 》「お母さんは、あなたがぜんぜん勉強しないから心配でたまらないのよ」
《You》「ずーっと学校に行かないで、留年になったらどうするつもり?!」
↓
《 I 》「あなたが留年になったら…と思うと気が気じゃなくて、お母さん、最近よく眠れないんだ」
●病院や相談室に通っていることを子どもにオープンにする
お子さんの不登校のことで病院や相談室に通っている親御さんも多いかと思いますが、私が勤務する相談室でも「ここに来ることは子どもには内緒にしています」という親御さんが少なからずいらっしゃいます。
そこで、親の対応のポイントとして、「⑦医療機関等を利用するときは、その予定や結果を子どもに伝える」をあげてみました。
私は、親御さんが病院や相談室に行くときは、できればそのことをお子さんに伝えたほうがいいと思っています。たとえお子さんが嫌がっても、隠すより、「〇〇に行ってくるよ」と伝えたほうがずっといい。直接言いにくいなら、リビングのカレンダーに◯をつけて「相談室」と記入しておくのはどうでしょう。
「相談室でどうせ僕の悪口を言ってるんだろ?!」などと言う子もいますが、そのときがチャンスで、「悪口なんかじゃないよ。お母さんが心配なことを先生に聞いてもらっているんだよ」と説明してください。
相談に行くようになったら、お母さんの対応が変わった(対応がよくなった)と感じている子は、お母さんが相談室から帰宅すると、「今日、何か言われた?」などと聞いてくることがあります。そうなったら、「今日は相談に行く日だけど、お母さんと一緒に行ってみない?」と、お子さんを誘ってみるのもいいと思います。
なお、《フェーズ5》のチェックリストのうち、以下の5項目は、次のステップである「安定・充足期」にもみられる状態像であり、学校には行けないけれど、いろいろなことに関心が向くようになってきたときに起きてくる変化です。
・学校のプリントや担任の先生からの手紙に目を通すようになった
・中間テストや期末テストの時期になると学校や勉強のことを気にしている
・家庭訪問に来た担任の先生と対面で話すことができた
・教科書を開いたり、「塾に通いたい」「家庭教師をつけてほしい」等と言うようになった
・教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール等の居場所について質問してきた








